いかり ……んぐっ
「いただきまーす!」
カーツ君がかぶりつく。
あっ!
「あちぃっ!」
そうですよね。
「揚げ物……こういったラードで揚げたものは熱いのでやけどしないように冷まして食べてくださいね。冷めてもおいしいのですが、温かいうちに食べる方がおいしくいただけますので冷ましすぎもあれですが……」
と、説明している間に、ハフハフフーフーして口に入れたリリアンヌ様が!
「おっと!」
カーツ君が倒れそうになったリリアンヌ様の背中を支えた。
うん、慣れたものですね!
リリアンヌ様が意識を取り戻す。
「ああ、なんて美味。この輪っかの形もかわいく、腕にはめて持ち歩きたいくらいですわ!」
リ、リリアンヌ様、イカリングを腕輪にするなんて……。
「おお!それいいね、ダンジョンに行くときの携帯用食料として腕にはめてくのもありだな!」
カーツ君、それはありじゃないです。
「ローファスさんの腕太いから、無理よ。キリカは足にもはめられそうなの」
ああ、ローファスさんがイカリングを腕にはめられないと泣いている姿が想像できる。
って、違う、違う、違う!そうじゃないんです。
「ダメですよ。イカリングは腕輪でも足輪でもないです。携帯食料でもないです!」
残念そうな顔をするみんな。
……これ、こっそり腕にはめるパターンなんじゃ……。まさかね?まさかよね?
そりゃ、日本でも芋がら縄とか、携帯食として芋の茎を縄にして腰に結び付けたりしてたらしいけど。
ああ、そうだ。芋の茎も食べられるのよね。ジャガイモはダメ。芋がら縄は、サトイモだった。サツマイモの茎も食べられる。
って、シャーグも、ミギルさんも、自分の腕回り確認しないの!
「衣がはがれてしまって美味しく食べられないから、せっかくのイカリングがまずくなっちゃいますよ?」
ショックを受けた顔を皆がする。
いや、イカリングを腕にはめられないからショックを受ける人って、初めてみました。……。異文化交流ですかね。この世界では普通なの?
誰か、違うと言って!
「本当においしいのよ。キリカ、イカ好きなの」
うんうん。魚介類おいしいですよね。
「はぁー。いいなぁこの国の人たち。海に行けばこんなうめぇイカがすぐとれるんだろう?」
カーツ君の言葉に、シャーグが目を見開く。
「ドラゴンタートによる被害を受けるこの国の民は不幸だと思っておったが……そうか、うらやましいか……」
シャーグがちょっと涙ぐんでいる。
「そうか……」
女性の一人が声をあげた。
「ユーリ様、他にもいろいろ教えてください。食べる物がない、ないと……作物が育たないということにばかり目を向けていました。まずい物をこらえて食べるしかないと。それがこの国でも……美味しい物が食べられるんですね……」
作物が育たないと、確かに余裕がなくなる。
それに、いつドラゴンタートに襲われて被害が出るかと、怯えながらの生活では食べることだけで精一杯になるのも分かる。
だけれど、巨大魔法陣が設置されて被害はマシになったと言っていた。だったら、少しは余裕が出てくるのかもしれない。
「イカを使った他の料理も、青の大陸に戻ってから作り方を教えます。ですが、基本的には、イカをさばいてこの状態にした後は、いろいろ自分たちで工夫して食べてください。塩で焼いたり、ご飯と一緒に炊いたり……。あ、あと、あたりめやスルメにするとおいしいんですよ。お酒を飲むときにも合うし、それに保存食になります。ああ、携帯食にも。噛めば噛むほど味が出て……」
うんうん。美味しいよね。スルメ。
「それはどうやって作るの?ユーリちゃん!」
「いえ、あの、すぐにできる料理じゃないので。乾燥させないといけないし……。また今度」
リリアンヌ様の目がぎらぎらしてます。
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