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「硬いけど、これでモンスターやっつけられるのか?」
カーツ君が私の手の中の小豆を見た。
「どうじゃろうな。それも実験して見なければ分からぬ。とりあえず、何種類かのハズレ魔石回収の依頼をギルドにしてみるつもりじゃが……」
ハズレ魔石回収!
「あ、あの、その依頼って、私たちでも入手できるようなダンジョンとかで?」
小豆、小豆、小豆!
何種類かのハズレ魔石ってことは、他にもなんかあるんだよね!あるんだよね!何だろ。大豆?
大豆!大豆!大豆!
そういえばコカトリスの尻尾から鰹節のかけらも出たんだ。あれも確かハズレ魔石って言ってた。
ハズレ魔石欲しい!
そもそもカカオ豆だってハズレ魔石なんだし。……ん?この大陸でカカオ豆取れちゃったら貿易が……?
……とりあえずそれは今度会ったときにリリアンヌ様に尋ねてみればいいか。
「そうじゃなぁ。魔法石の中でも人気がない土の魔法石しか出ないダンジョンがあるんじゃ。ポーション畑よりは少し広くて、スライムよりは少し厄介なモンスターも出るんじゃが……」
ハンノマさんが私とカーツくんとキリカちゃんの顔を順に見た。
「ふむ、冒険者に依頼をしても受けてくれる人は少なそうだとは思っておったが……お前たち冒険者見習いでも、冒険者が1人加われば問題ないじゃろう」
「本当ですか?!」
やった!
「ずいぶん嬉しそうじゃが、本当に魔石はほとんど期待できないぞ?ポーション畑と稼ぎはさほど変わらないだろうし、ワシが出せる依頼料をもっと出してやりたいが、高額な依頼料にして、何かあるんじゃないかとゴムの秘密がバレるのも困るんじゃよ……。いいのか?本当に?」
なるほど。人気のないダンジョンでハズレ魔石を回収するために高額な依頼料を出すと変な勘繰りをされるのか。ハズレ魔石を何に使うのかというところからゴムのことも知られてしまう。なくはない。
「はい!私、その、えっと、他のダンジョンも見てみたいと思っていたんです!」
「あはは。ユーリ姉ちゃんさ、スライム見るたびに悲鳴上げながら倒してるもんな。ガーマとかは平気なのに」
だって、スライムはGみたいなんだもんっ。あれはダメ。脊髄が反射するというか……。
「キリカも楽しみなの。ユーリお姉ちゃんがハズレ魔石見つけるの」
ふふふとキリカちゃんが笑った。
「だなー。てなわけで、その依頼、俺たち3人が受けてもいいかな?」
ハンノマさんが頷いた。
「渡りに船じゃな。ハズレ魔石など何に使うのかと聞かれるよりも、初めから何に使うか知っている人間に頼めるならありがたい。ギルドを通しての依頼料は上乗せできないが、お礼はするぞ。ギルドには冒険者見習い3人と冒険者1人で指名依頼しておくかの」
キリカちゃんが声を上げる。
「指名依頼なんてすごいのよ!」
「すまんなぁ。本来、指名依頼をされるのは名誉なことじゃが、今回はギルドにも依頼料が安いから受けてくれる人間が他に見つかりそうにないから知り合いの冒険者見習いと冒険者に頼んだと事情を説明することになると思うんじゃ」
カーツ君が頷いた。
「うん、それって、実力を評価されての指名依頼じゃないから、冒険者評価が加算されないってことだろ?」
冒険者評価?
加算?
「でも、ハンノマさんが信用してる人物だって思われるんだ。冒険者評価は加算されないかもしれないけど、人の評価は上がるよきっと」
「そうなの。ハンノマさんいい人なの。いい人と知り合いなのはいいことなのよ!」
ハンノマさんが楽しそうに笑い出した。
「ははははっ。お前たちはいい子じゃなぁ。ワシがいい人か。ワシに信用されるのがいいことじゃと?うむ、うむ。ワシは単に偏屈で頑固なドワーフの鍛冶師なんじゃがなぁ。はははは。うん、よし。今度また体が大きくなったら体に合わせた武器を作ってやるぞ!」
うん。なんか冒険者の色々はよくわからないけど、カーツ君もキリカちゃんもハンノマさんもみんな笑顔だから、きっと何にも悪いことなんてないんだよね。
「ねー、冒険者は誰を指名するの?」
「そうじゃな。お前たちと親しいのはローファスの坊主だろう。流石にS級冒険者を指名依頼したんじゃ不審がられるからなぁ。ハズレ魔石回収のための初級ダンジョンよりも簡単な土の魔法石畑にS級冒険者はなぁ……お前たちの知り合いで冒険者はいないか?」
「ブライスお兄ちゃんがいるのよ!この間冒険者になったのよ!」
「ふむ、ブライスか。この間冒険者になったってことはF級か?それともEかDにすでに昇級しておったりするのか?」
ハンノマさんの口ぶりだと、F級からEやDにトントンと昇級する人は珍しくないのかな?
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