い、い、い、いかが?
「もう一度タコを取りに行ってくるのです!」
「そうだ、タコを!」
戻ってきたばかりの兵に、リリアンヌ様とシャーグが同時に命じた。
隊長は困った顔をして、手に持っているものに視線を落とす。
「え?これはタコじゃないんですが?足がたくさんあって、うねうねしている」
カーツ君が首を横に振った。
「クラーケンはもっと丸っぽかったぞ」
がくっとうなだれて隊長が背を向けた。
「ま、待ってください。その手に持っているそれ!イカ!イカもおいしいんです!イカ!イカをくださいっ!」
タコじゃないけど、イカもおいしい。
ふふふー。何作ろうかな。
やっぱりイカリング?
イカのバター醤油焼きもいいなぁ。イカをいれた焼きそばにパスタに……。
って、何にも材料がない!
それに、ポーション料理は秘密だった。
「あの、何か食材をお願いできませんか?」
お願いすると、シャーグが近くにいた女性に声をかけた。
女性は急いでどこかへ行ってから戻ってきた。
「あの……今すぐに準備できる食材はろくなものがありません……申し訳ありません」
女性の後ろに3人、籠を抱えている。
いつの間にかテーブルと椅子も用意されていて、テーブルに食材を並べていく。
「これは小麦粉ね」
量は多くない。なけなしの小麦粉なのかな。
「はい。あと、こちらのパンは古くて硬くなっています。申し訳ありません」
硬いパン?
「パン粉が作れるわね。カーツ君、パンをおろしてパン粉を作って欲しいのだけど、分かる?」
ざるのようなものがあったので、硬くなったパンをこすりつける。
「こうするの。これはむしろ硬くなったパンじゃないとできないのよ。ありがとう」
お礼を言うと硬いパンをテーブルに置いた女性がびっくりしていた。
「じゃあ、カーツ君パン粉作りお願いね」
本当は卵があればいいんだけど、この世界の卵は食べないのが常識だからあきらめよう。
バッター液は卵と小麦粉と水で作るのが基本だけど、水と小麦粉だけでも代用できる。
そういえば、バッター液を昆虫食だと勘違いした人がいたって話も聞いたことがあるけれど、バッタは関係ないんですよね。あと野球のバッターも関係ないんですよね。英語の綴りだと、バッター液のバッターと野球のバッターは違うし発音も違う。……ああ、綴り間違いをまた思い出してしまった。今度は日本語だけで書いてあるから、ブライス君、ちゃんと読んでくれるよね?
「小麦粉を使わせてもらいますね。キリカちゃんお水とよく混ぜてくれる?」
いつの間にか手伝いに来てくれたキリカちゃんにバッター液づくりを任せる。
「その、硬いパンの他には、このような脂身がほとんどの肉と」
真っ白な立派な脂身が出てきた。
牛脂なのか豚脂なのか何の動物なのかは分からないけれど、獣脂だ。
匂いを嗅ぐと臭みもほとんどないみたい。これなら……。
「なんの肉かわかりませんがラードができますね。ありがとう」
お礼を言うとまた女性が驚いている。
「リリアンヌ様、手伝っていただいてもよろしいですか?」
「ええ!まかせて!もちろんよ!何をすればいいのかしら?」
「この脂身を鍋にいれて熱してください。液体が沢山出てきて身が縮んできたら教えてください」
リリアンヌ様は大きくうなづいて任せてと言った。
カーツ君にパン粉を作ってもらって、キリカちゃんにバッター液を。それからリリアンヌ様にラードもどきを作ってもらう。
その間に、私はイカをさばかないと。
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