昆布茶のちゃちゃちゃ
「では毒見を……うっ」
「どうしたの、セバスティアン!」
「これは、お茶……では……ないのでは?」
え?
慌てて自分の昆布茶を飲む。先ほど味見したときはちゃんと昆布茶の味だったはず。まぁ、多少薄味であるけれど。それでも昆布の旨味もしっかり出ているし、塩も強すぎず薄すぎず……飲みやすい味だと思うのだけど。
「そう、これは極上のスープ。じっくり煮込んで出した深い味わいのある……スープ!」
セバスティアンさんが、カップを掲げる。
「確かに作り方を見ていれば、その粉にしたお茶の葉をお湯に入れただけですが、お茶ではない。ああ、このようなお茶があれば、粉を持ち歩きさえすればどこででもこのような極上のスープが口にできれば……私はあと50年冒険者を続けられたのに!」
何歳まで冒険者を……?
「本当だ。すげーうめー!」
「ふぅーふぅー、キリカまだ熱くて飲めないの」
猫舌だものね。キリカちゃん。かわいい。
あ、リリアンヌ様が気絶。セバスティアンさんが支える。
なんだかみんな忙しい。とりあえず昆布茶を気に入ってくれたみたいなのでよかった。
いや、よくない!
いくら気に入ってもらえても、この昆布は、偶然私の服に引っ付いてきたもの。入手方法が今のところない!
海沿いの街に行かないと。
「ユーリちゃん、これは何ですの?」
リリアンヌ様が意識を取り戻した途端に訪ねてきた。
「……昆布茶です。えっと、もうありません……」
それだけで伝わったようだ。
「ああ、これは……あっちの……こうなれば、いち早く通信鏡で送ってもらうように言わなければ!」
すくっと立ち上がるリリンヌ様。
「セバスティアン、準備はできていて?」
そこにカーツ君が角煮干し肉を藤籠にいれて持ってきた。
「あっ!そうでしたわ!大事なものを忘れるところでした!」
リリアンヌ様がカーツ君が抱えてきた籠に視線を向ける。
「こんなにあるんですの?」
リリアンヌ様のお目目がキラキラ。
「代金をお支払いいたします」
セバスティアンが財布を取り出す。
「いえ、リリアンヌ様にはいろいろお世話になりましたし……大したものじゃありませんので」
と断ったんだけど、
「そう言うわけにはいきませんわ。それに……また、ぜひお譲りしていただきたいもの。その時にタダでというわけにはいきませんでしょう?ですから今日からきちんと代金はお支払いいたしますわ」
といっても、料金設定はよくわからないんだけど……。
どうしよう。
カーツ君の顔を見る。私の方が大人だけど、この世界では3歳児……体力も、そして知識も……ぐはうっ。
「なぁ、また譲ってほしいっていうのは、干し肉を買いにくるってことか?」
カーツ君の言葉に、リリアンヌ様が笑いかけた。
「そうですわ。私自身は、そう何度も屋敷を離れる分けには行きませんので、誰か使いの者を立てて――」
「私が来ますよ。顔を知っていた者が来た方が安心できるでしょう」
セバスティアンの言葉に、カーツ君が話を続ける。
「だったらさ、買いに来た時に、街に連れてってくれないか?俺たちの足じゃ、買い物して帰るにはちょっと大変で……」
そうですね。私もちょっと体力が上がったと言っても、往復できるかな?休みがてらなら大丈夫かな?レベルだし。
帰りは買ったものを運ばないといけないので……もっと大変ですよね。
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