ダイーズ+ギルドのお姉さん

「いえ、とんでもありません。はー、そりゃハンノマさんの短剣を所持してるんですものね。ええ、もちろん冒険者として大歓迎いたしますよ」

 ……え?ハンノマさんの短剣を持っているから冒険者にしてもらえるの?

 そうなんだ。ハンノマさんのおかげ。やっぱり、僕のステータスだと弱すぎるのかな?

「もしかして、すでにダンジョンでモンスターを倒してますか?ポーション畑や魔石畑などで」

「いえ。ダンジョンって洞窟みたいなところですよね?入ったことないです。だからモンスターも倒したことはないです。獣なら毎日狩っていましたけど……」

 と答えながらふと思い出す。

 狩場の森の奥には不思議な森がある。

 獣を倒すと、光って消えてなくなってしまうのだ。昔から村では奥に行くと神隠しに遭うから行くなと言われているから、あれが神隠しなのかな?

 言ってはだめな神隠しの森に、獣を追って何度か迷いこんで死にかけた。そこでお爺さんに助けられ、弱いからと鍛えてくれる。

 背中に背負った小型の弓も、お爺さんに教えてもらった。神隠しの森で訓練してくれる。

 今では神隠しの森の真ん中くらいまでは行けるようになった。でもその奥は「お前にはまだ早い」とお爺さんに止められている。

「狩り……でレベル上げを……?そうなんですね。はい、これがギルドのカードです。無くさないようにしてください。新たに冒険者となった者に対する初心者講習がこの後に行われますので、参加してください。それまでは仮のF級冒険者カードとなります」

「仮?えっと、初心者講習って何をするんですか?あの、僕みたいな……その……大丈夫でしょうか?」

「レベルを10に上げただけで、ダンジョンルールもろくに知らない人間が冒険者になることもあるんですよ」

「ダンジョンルール?」

「あら?もしかして誰かに教えてもらわなかった?この時期に冒険者登録をするということは、冒険者養成学校に通っていたわけではありませんよね?だとすると、通常レベル上げはポーション畑や、魔石畑など、初級ダンジョンより難易度の低いダンジョンでモンスターを倒して上げるんですが……。そこで周りの人がダンジョンルールを教え合うはずなんです。って、ダンジョンにはいったことがないと言っていましたね……。」

 そうなんだ。ダンジョンルール……。ダンジョンにみんなは行ってモンスターを倒したことがあるんだ。

 ますます僕は冒険者としてやっていけるのか不安になる。

 お姉さんはにこりと笑ってくれた。

「そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫ですよ。君のようにダンジョンとは無縁でレベルを上げて登録に来る人も年に何人かいます」

 あ、そうなんだ。よかった。

 それにしても、お姉さんは僕の気持ちがよくわかるんだ。そんなに表情に出ていただろうか?

「ダイーズ君のように、全くダンジョンルールを知らない人や、間違って覚えている人、それからダンジョンルールを軽く見ている人、そういった人たちがいないか確認し、必要な人間にはダンジョンルールを叩きこむための講習ですから。F級に登録時とB級昇格時には義務付けられています」

「え?B級昇格時に?」

「そうです。忘れていることがないかという復習と、気のゆるみによる事故を防ぐため。それからB級となってから課せられる責任の重さを叩きこむための講習ですよ」

 なるほど。



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