第19話 少女を支配するもの

 狭くそして暗い廊下を歩いているルクス達と支配人は奴隷が展示させられている場所まで来た。そこは奴隷商のロビー同様で先ほどまで暗かった雰囲気がなくなるほど綺麗な場所だった。壁には有名な絵画や部屋の中は心が落ち着く綺麗な音色の音楽が流れている。


 「ではでは少々準備をしてまいりますのでゆっくりしていてくださいませ」

 「わかりました」


 レイラがそう反応するとそれを確認した支配人は駆け足でドアの方まで行った。レイラはルクスの方を向くと明らかにいつもと違く、何かを察した雰囲気が漂っていた。これが悟れるのは長年一緒にいるレイラだけだろう。


 「ルクス……なにかあったのよね」

 「……うん、ここ何かおかしい。助け声が聞こえる」

 「なに?助け声」


 レイラはルクスの発言にやや驚きはしたけどすぐさま正気を戻した。そうしていると準備が終わった支配人がドアを開けてルクス達の元へ戻ってきた。


 「時間を取らせてしまいすみません」

 「いやいや俺たちはこの綺麗な部屋を見ていて心を落ち着かせていたのでいいですよ」

 

 ルクスが支配人に初めての一声を放つ。支配人は笑顔でえぇと答えた。ルクス達は人が三人ほど通れる廊下に出てそこは地面に高価そうな真紅の絨毯と両壁には1m感覚に綺麗で透明なガラスがおかれていて奴隷はその中に居たのだ。


 「レイラ……いろんな種族が居るんだね」

 「そうね、ここは性奴隷しかいないから美人がいっぱいだね」


 ある程度進むと明らかに雰囲気が違う一個のドアの目の前までたどり着いた。ルクスは「ここは?」と支配人に尋ねると、支配人は一番高い奴隷ですぞと答えた。


 「見せて」

 「……お金があればいいですよ」


 どうやら先払いらしいこの部屋の中に居る少女は。少し言うのをためらった支配人は次にルクスに問う


 「ここはお金が全てですぞ。ここに入りたい理由は?」


 ルクスはいつものように返事を返す


 「なんとなく」

 

 ルクスのその発言が何かを切ったのであろう。その支配人は大声でルクスに質問を掛ける。


 「貴様はただ者ではないな!」

 「僕は普通だよ」

 「なわけ――」


 支配人が何かを言いかけようとしたとき周囲の壁やガラスが突然割れた。レイラが恐る恐る前を見るとやはりルクスの仕業だった。ルクスは支配人が何かを言い切る前にとっさに支配人の腹に打撃を加えたのだ。


 「ルクスの打撃でこの威力……」

 

 そう感心しているレイラに一本の念話ねんわが通る。


 「――聞こえる?――」

 「――聞こえるわよ――」

 「――奴隷の子たちを僕たちの宿に隠して――」

 「――了解――」


 レイラは了解の意を示しその場にいた奴隷たちをレイラはミシェリーさんの宿に連れ帰った。それを確認したルクスはよろよろと立ち上がる支配人を見る。


 「……う、これは凄い威力のパンチですね」

 「これを食らって立ててるのは一体何者なの?」

 「まぁ。この機会も何かの縁ですね……私は【青塔七剣聖せいとうしちけんせい】が一人の

拳王ファイターキング シ・テン》だ」


 拳王ファイターキングと名乗ったその者の名はルクスの記憶の中には無かった。おそらくだがこの青塔七剣聖せいとうしちけんせいはルクスが元戦っていた時代より後にできた組織だろう。空気がピリピリと震えそこには緊張感が出てきた。


 テンは何も躊躇することなくルクスに目掛けて一発のこぶしが前に出される。もちろんルクスは避けるが、こぶしの速さなのだろう避けたはずのこぶしがルクスに傷を負わせたのだ。


 「あれ、俺怪我している」

 「はははは、私のこぶしから逃げきれたものはいないんだよ」


 テンは次々とルクスにこぶしを放つ、ルクスも頑張って避けるがパンチの後に来る風圧で何回も後方へ吹き飛ばされる。


 「君強い」

 「それはどうもうれしく心の中に止めておきます……」


 レイラは約10人ほどいた奴隷たちを宿まで連れて帰っていた、そこにはミシェリーさんとシュリが居た。軽く事情を話し快く受け取った二人は早速、少女たちの服を見繕い湯浴みをさせてさらに食事までさせた。


 「ありがとう!。おねぇーちゃん」

 「か、かわいい~」


 少女たちは一番若いもので10歳、一番上の者で20代ぐらいだ。確かに性奴隷としては十分だねっとレイラは思った。色々世話をしてなんで捕らえられたのか、と色々と話を聞いた。


 大体の物はさらわれて奴隷商に売り飛ばされた感じだった。


 「……ルクス大丈夫だよね」


 青の塔では……


 「リッカ様、今の状況を伝えに来ました」

 「よかろう、話せ」

 「青の支配下に置けるトップの奴隷商が何者かの仕業で襲撃されています」

 「あそこはテンの支配下じゃろ?」

 「はい、心配は無いとは思いますが……」

 「どうした?」

 「あの……襲撃を掛けた者の支配下が分からないのです」

 「どういう事じゃ?」

 「なにせあの者はサリエス教国の住民ではないのです」

 「ではなんでこのサリエス教国に喧嘩をうったんじゃろな?」

 「そこまでは我々ではつかめなかったです……。そこで監視技ロングアイを仕掛けておきましたのでここから観察できるかと……」

 「見せよ」

 「なんじゃこれは……」


 

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