第9話 記憶失われし者はライトギニアの城へ出向く

 ベットの上で意識を取り戻した俺は、なぜか二人の美少女に心配されていた。先ほど俺はいきなり襲撃を仕掛けてきた、魔人族を返り打ちにしてそこから出てきた四死聖典ししせいてんと言う組織の幹部らしき者ラクトキネシスと言う者と激闘をしたらしい……。


 俺は正直のところ覚えていないのだがね……。魔人と戦ったのは覚えているがラクトキネシスという者と戦った記憶は本当にない。だがレイラとシュリが二人とも戦ったと言い張るから俺は戦ったのだろう。


 そんなわいわいしていた俺たちに一通の手紙が来る。


 「ルクス読むよー!」

 「はいはい。今行くよ」

 「ルクス君準備はできたかいな?」


 俺たちは恐る恐る謎の手紙を開いた。


 そこには……。


 ルクス君……そういえば君の事をギニア王に知らせるの忘れておったわい。至急準備をして王城に来るがよい。


 『え……まずくね?』


 俺にはよくわからなかったのだが、二人は冷や汗をかいていた。その手紙を読んだ二人は急に俺を抱えてタンスの前に連れていかれて無理やり服を脱がされ、いつもとは別の恰好に着替えさせられた。


 「ねぇ、なんでこんな高そうな服を着させるの?」

 「ルクス君は今からギニア王の元へ行くのです!」

 「え……」

 「ルクスは本当にこんな事には鈍感なんだから……」


 レイラはため息を吐きながらそう答えた。


 そして俺たちは王城へ向かった。城は白を基調として、それはそれはいかにもまだ汚していませんよ!と感じられるような綺麗な城肌。これ……泥一つでもはねたら俺の首も持っていかれるかも……と感じながら玉座がある部屋まで案内された。


 大きな鉄製の両開きドアは二人の兵士の声で開けられた。


 「英雄ルクス殿とそのパーティーのおなりです!」

 

 ガガガと大きな音を立てながら開くドアに俺は少し驚いた。ドアが最大まで開くと次は綺麗な赤色のカーペットが玉座まで続いている。俺たちはそのままその上を歩いて玉座の前まで来た。


 そうしたら、二人はいきなり膝をついて顔をカーペットの方へ下げた。俺はそのまま突っ立っている。それを気にしたレイラは俺の服を思いっきり引っ張って力ずくで片膝を床につけようとしてくる。


 「痛いよー」

 「ルクス! 王の前だよ!」

 「え……」

 「ルクス君は安定ですね」


 俺は仕方がなく片膝を床につけた。そしたら階段の先にある玉座に座っている王が笑いながら俺たちに話しかける。


 「わっはははは、良いんじゃよ。レイラ殿」


 その一言に周りに30人ぐらい居るであろう兵士たちとお偉いさんが驚いた顔でざわついている。


 「元気でしたかギニアさん?」

 「わしは元気だぞ!」


 事情を知らない俺たちは二人の話に置いてけぼりにされた。俺はそんなことを気にせずに話している二人に話を掛ける。


 「ねぇ、二人ってどんな関係なの?」

 「わっはははは」


 また高笑いをするギニア王は嬉しそうに答える。


 「ワシとレイラ殿は昔の友達なんだよ。レイラ殿は妖精様だからワシばっかり年を取るものよ!」

 「へぇーそんなもんなんだ!」


 そして俺たちはレイラとギニア王の昔話をはさみながら少し雑談をした。ある程度話終わるとギニア王が玉座の間に居るすべての者達に部屋から出るように命令をした。


 やはりそこは王様と言うもの、皆は言われた通りに次々と外へ出る。そこからギニア王は遮断結界しゃだんけっかいを玉座の間に張り巡らせた。この行為はどうやら今から大事な話をするからであろう。


 そうしてギニア王が口を開いた。


 「レイラ殿、本当にこの方があの方なのですか?」

 「そうです……。それと今あなたは王の身なのですから私たちに敬語は不要です」

 「え……あ、それなら。分かりました」


 どうやらそれは俺に関する事だった。


 「あの事をきっかけに全ての記憶を失ってしまったようです」

 「それは……可哀そうに」

 「そして話とは?」

 「どうじゃった!。ワシはこの前の騒動の報告書に目を通したのじゃ、そしたらあまりに不自然な部分があったのじゃ」

 「それとは?」

 「人間が魔人族を一人で蹴散らしていると……」

 「あ……」

 「そして、その人間が魔人族の最高機関である四死聖典ししせいてんの幹部の一人であるラクトキネシスを単独討伐を果たしたと……。ワシはそれが気になりその者を調査するようにレイラ殿に頼みたいのじゃ」

 「あ……いや……その……」


 俺には分かる。レイラは心の奥で笑いをこらえている。


 「ギニア王、その者……把握済みです」

 「本当か早く合わせてもらえないですか!」

 「あの……いや……私の隣に寝っ転がっているこの馬鹿です」

 「え……」

 「え、俺が馬鹿?」

 「いいえ、そんなことはないですよルクス」


 俺には分かる、今レイラは心の奥で今は大事な話だから邪魔をするなと俺にオーラで語っている。俺はその場で正座をした。


 「ふむふむ、ルクス君なら確かにあり得る話だが、やはり記憶がなくなっている分昔の実力は無いか……。いや、なくて良かった。よし分かった。今からルクス君率いるこのパーティーはワシの名の下でこの国の全ての自由を約束する!」


 なんだか俺には難しい話だがレイラが俺に簡単に説明してくれた。どうやら俺たちはこの国で基本何しても良いらしい。それを聞いたレイラがギニア王にお願いを掛ける。


 「それなら私行きたい場所があります……」


 

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