第8話 記憶を失い強くなる者

 周りに響く金属と金属が交わりあう嫌な音、その音の正体は剣が互いにぶつかる音。ルクスは徐々にラクトキネシスを切り裂いていく、それは相手も同じでルクスを徐々に切っている。


 「こ、このレベルになるとスキルを使うだけで相殺してしまうんですね」

 「そうね……でも、ルクスは絶対勝つよ。なぜならあの子は訳ありだからよ」

 「そうだね、ルクス君は訳ありだもんね。私変な心配してしまいました」


 その頃、剣をぶつけ合う音は終わり、逆にスキルを互いに大量に打ち合う戦い方に変わっていた。


 「《空之捕食者イーブルイーター》」


 ラクトキネシスが唱えたスキルはたちまちラクトキネシスの後方から続々と出てくる黒くて長い蛇みたいなものが、ラクトキネシスの指示で次の瞬間。ルクスの方に全て向かっていた。ルクスは頭の中で瞬時に演算をはじめ、結果この空之捕食者に当たったらまずい事が分かった。


 「空之捕食者か……。また珍しい技を」

 「そう四死聖典が一人。この私は空の支配者とも呼ばれた者。君みたいな半端者では私には勝てまい」

 「えーそうなんだ」


 そうルクスは答えると次の瞬間。ルクスの頭の中は真っ白になった。それは自分自身が自分とは思えないほどに勝手に体が動く。


 ――殲滅行動、標的、ラクトキネシス、開始――


 いきなりと現れたこの音はおそらく、ルクスから放たれている物だろう。この音は天から聞こえてくるような感じだ。その音を聞き真っ先に反応したものが居た……。それがレイラだ。


 「この声、もしかして昔のルクス?」

 「昔のルクスって……?」

 「前にも言ったけどルクスって記憶を失っているんだよ。それを私らは元に戻したくて今旅をしているの」

 「え。めっちゃ気になる……」


 天の声が聞こえ、3分が立った今ルクスに異変が起きる。ルクスの目の色が赤く光る真紅の色になる。目の色が変わった瞬間ルクスの動きが今まででないほどに早く正確になる。


 それは四死聖典の幹部でも負えないほどに……。


 「いやはやこのような力があるのは計算外です……。私たちのあなたへの評価を改めないといけないようです」

 「……」


 ルクスはもくもくと無言で鋭く重い斬撃を放ち、一発一発正確なスキルを無言で撃つ。


 「……」

 「(そろそろまずいですな、こいつ力の底が分からぬ。こいつ人間なのか?)」

 「……」


 無言状態に見覚えがあったレイラはシュリに少し遠くに行くように指示を出した。


 「シュリちゃん。離れてくれませんか?。あの子が覚醒之種かくせいモードに移行しました」

 「覚醒モード?」


 シュリは一般的な生物が答えるであろう反応をした。そう、この覚醒之種を知っている物は昔ルクスと剣を交えている人以外知らないのだ。


 「覚醒之種とは、自分自身が窮地になるとルクスの伝説技レジェンドスキルの一つである《百知之王メティス》の効果で隠された力が使えるという技なんです」

 「あの子の今の力ならそこまで被害が出ないはずだからいいものだけどこれがあの頃の力で使われていたらこの世界は終わっていたかもしれません……。いや、私のしゃべりすぎですね。さて逃げましょう」

 「いろいろ興味深い話が聞けました。この戦いが終わった後にまた聞かせてください!」


 そうしてレイラとシュリは避難を開始した。覚醒之種になったルクスは無言でいまだにラクトキネシスを斬りつけている。ラクトキネシスは今まで見たことがない太刀筋と速度を伴う最強の剣を止めることができずに手足が徐々に切られていく。


 ――終了、殲滅対象、殲滅、確認、完了――


 そうして覚醒之種の状態は解除されルクスはその場に倒れた。その天の声が聞こえたであろうレイラとシュリはすぐルクスの元に駆けつけて倒れたルクスを銀狼の元へ運ぶ。


 「……ん?。ここはどこだ。確か俺はラクトキネシスと戦っていたんじゃ……」


 俺は深い眠りから今起きた。目を開けた俺はなぜか美女が目の前に俺の顔を除いていた。


 「ルクス! やっと起きたんだね!。ラクトキネシスは消滅したよ!」

 「一体だれが倒したんだ?」

 「ルクス君。君が倒したのです!」

 「俺が? 一体……」

 『(本当に覚えていないんだな~)』


 俺は俺の意識が無い時の事を事細かく二人に教えてもらった。そういつも通り楽しい暮らしをしている中。新たな刺客が来ることになる。


 「やはり、あいつじゃ勝てなかったんだな」

 「そうだね! そうだね! ラクトじゃアイツには勝てっこ無いよ!」

 「そうだ……我々が次出なければヷァルム様に顔向けできないな……」

 「――我の事なら大丈夫だ。我もラクトが勝てないと分かっていたからね――」

 「それはどういう?」

 「――簡単だろう。あの子は幹部ごときじゃ勝てないと私は知っている――」

 「それは私たちも入るのだ?」

 「――それは知らん。お前ら次第だ――」

 「ならば次はこの我が行きましょう」

 「――頼んだぞ……シンエイ――」

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