第21話 偵察
「あれは一体何者なんだ……」
ミチルがそうつぶやいた先に居たのは青の塔精鋭部隊の青塔七剣聖の
正直このサリエス教国の民なら分かる精鋭部隊の強さ、まず現地の人なら戦う事すら無謀とされてきた相手だがそれに立ち向かう男……それがルクスだ。
そのことを知っているミチルはどうせテンが勝つことを予想して目を瞑っていたのだがふと頭によぎる言葉があった。それはユイからの言葉だった。
「――ルクスには絶対に危害を与えてはいけない。あの子は化け物だ――」
ミチルは目を開けて恐る恐る戦況を確認するために屋根の窓に視線を移した。
「うそでしょ……」
そこにはボコボコにされながらも戦うテンと遊び程度に感じているルクスだった。
「貴様強いな……はぁはぁ」
「俺まだまだ本気じゃない」
「はぁはぁ、うるさい……《
ミチルはその様子を陰ながら見ていてテンから放たれる、最強の
剣聖種とはテンが持っている無数の武術の中でトップに位置される四種類の
目に留まらぬスピードで拳が通った後に来る鋭い風圧、その風圧は周囲の壁を次々と破壊していく。そんな拳の先はルクスが居た。
ミチルには見えなかったルクスが何をしていたかを……
ただ聞こえたパチンという音
「私の拳聖を受けきったやつは未だに居ないぞ!」
「えぇ、これが?」
(パチン)
ルクスは指を鳴らした、そうするとテンが放っていた拳の雨がなぜかその場から消失した。これはテンもびっくりした……。
「う、嘘だろ……」
テンの目の前に居るの人の領域を超えた人間ルクスだった。テンは今回は相手が悪かった。そのままテンはその場で体ごと消滅した。
「なんだ、テンの生命反応が途絶えた?」
「あのテンが負けた?」
「
「かしこまりました」
リッカはテンの生命反応が途絶えたことと、そのテンを倒した謎の人物、そして謎の襲撃これらが一人の行動と考えそれを自身の精鋭部隊の青塔七剣聖に知らせるべく自室に呼んだ。
「なにかありましたでしょうか?」
体格が大柄な男がリッカに話をかける。その質問に反応するリッカ。
「拳王 シ・テンが殺された」
「何ですぞ!?!?」
もちろんの反応だ。テンは青塔七剣聖の中でもかなり強い方だった。嫌な汗をかいている髪がはねている口元を隠した人間がそのまま質問をする。
「相手はどれぐらいの強者でしょうか?」
「それは私でも分からぬ。だが決して油断はするな!」
そうリッカが警告をすると、配下の者は「ッハ」と声をそろえる。
「一体何者なんだ……謎の者」
今はミチルは屋根の上から窓で様子をうかがっている。圧倒しているルクスに驚いているだろう。この年の季節はとても寒い、ミチルは半袖で薄着だった。
「あれがユイ様が化け物と言う存在……ただ者では無い」
そうしているとルクスが声をあげた。
「なにチラチラ見てるの?」
「(まずい……)」
ルクスがミチルのいる屋根の窓にめがけて手を差し出した。そこからだんだんと手の中が紫色の魔力に染まっていくのが分かるほどにだ。
「ルクスさんですよね!!」
窓からバリンと言う音を立ててルクスの前に飛び降りた。これが今ミチルができる最善策だったそうだ。
「お前は?」
「ッハ。私はユイ様の指示でここに来たものです」
ミチルがユイと言う名前を出した瞬間ルクスの頭の中で何者かがささやいてきた。
――ユイ 大事 存在――
「あぁ。ユイか……懐かしい……」
「そしてルクス様にユイ様が拝見したいと言うことで……」
「レイラに聞いてみる」
「では私はこの辺で……」
風の音もなくその場から去るミチルを見送って奥に閉じ込められていた少女を助けることにした。
「《
ガチャと共に重厚な鉄扉のカギが開き、ガガガと言う音を立てながら開いた。ルクスはその中に入りあたりを見まわすとそこにはエルフの少女がいた。
「きみ、大丈夫?」
ルクスは声をかける。
「あ、え、あ、はい……」
おそらく怯えているのだろう、そう思ったルクス手持ちの毛布を体に巻き付けてあげて、優しい声で話す。
「僕の家に帰ろう」
少女は首を縦に振った。
ミシェリーさんの宿に到着するとルクスは自室に戻った。そこにはレイラとシュリの姿があった。レイラにほかの子はどうしたの?と聞くと、先日戦った、リブルヘルン戦の戦後処理をしていた。国も復興していないのだが、運がよく奴隷だった子を住まわせる場所は確保出来たらしい。
「それはそうで、その子は?」
「あぁ、俺が奴隷商を疑ったのはこの子の存在があったからだ」
「と、言いますと?」
「この子は隠された力がある」
「ルクス君が言うなら本当でしょうね」
レイラはある程度状況が分かったのだろう、ほかの子のためにたくさん服などを買っていたため、その子に着させることにした……
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