第20話 三色会議

 三色さんしきの塔、中塔……そこには半年に一度全支配者が集まり、三色会議というものが始まる。


 三色会議はルール改ざんや、ほかにもいろいろな事が話題に出ている。それは雑談も例外ではない。


 「青の塔支配者リッカ様がご到着です」


 落ち着いた声で丁寧な言葉遣いの案内人がそう答えると、突然周囲から水蒸気が出てきた。


 案内人は次々と名前を呼んでいく。


 「赤の塔支配者ヒメカ様がご到着です」

 「リッカ殿、お久しぶりではないでしょうか……」

 「あぁ、ヒメカ俺とは久しぶりだよな」

 「ところでまだ一人来ていないが言いたいことがある。俺の奴隷商に――」


 最後の一人が到着した。まだ会場には入ってきていないけど氷の結晶があたり一面にできる。会場に居るリッカとヒメカからは冬特有の白い息が出ている。


 「白の塔支配者ユイ様がご到着です」


 コツコツと均等に音を立てながら暗闇から現れたのは色女とはこの人を思い出すかのような色気がある女性。


 「最後でしたか……すみませんでしたね」

 「いや構わんさ……」

 「あら、ユイ殿はいつもより色気がありますかな?」

 「私……。あるのかな?」


 こうして三色の塔の半年に一度の会議。三色会議が始まった。


 「では今回のメイン議題をあげさせたいと思います」


 案内人が口を開く。


 「リッカ様から申し出てもらった議題です。『どうやら俺の支配下のトップの奴隷商が襲撃されたのだがお前ら知らないか?』と今回のメイン議題です」


 リッカが後を続けて案内人と同じように自分の口で話す。


 「私の所は奴隷が禁止なもので、心あたりが無いですね」

 「ユイはどうだ?」

 「私も、メインは夜のお店……奴隷を許可はしていない。だけど私の支配下でそんな事をするものはいないでしょう」

 「私から一つ」


 ヒメカがリッカに向けて素朴な疑問をする。


 「リッカ殿はなぜそのような口調なのです?」

 「あぁ、これかこれはな……。部下の前では女のふりをしないといけないからだ。だるいもんさ」

 「あら、そんな事だったの」


 これでリッカの口調問題も解決した。そして何も解決しないまま10分が経過して、リッカがある一人の人物の名を出した。


 「お前ら、こいつを知っているか?」


 リッカはある一枚の紙を出して三色の支配者たちに見せた。


 「こいつはルクスと言うらしい」


 リッカがルクスと名を出した瞬間ヒメカが何かを思い出した顔をしたがそれはばれないように隠した。


 「ここの支配者の中に襲撃したものが居ない……。なら最近このサリエス教国に来たこいつが怪しいのだ。しかもこいつ昨日から急に名が出てきてな」

 「あら、それは怪しいですね」

 「私もそう思う」


 会議は後半に差し掛かり、軍事力やいろんなことが話題に出された。


 ・青の塔 《青塔七剣聖せいとうしちけんせい

 ・赤の塔 《紅連会ぐれんかい

 ・白の塔 《七白雪しちしろゆき


 この会議においては、軍事力は嘘をつかない、隠さないが暗黙のルールだ。このルールがある限り騙すことはできない。


 会議が終わり、各支配者は自分の塔の自室に戻っていく。白の支配者ユイの住居である白銀の雪原はくぎんのせつげん地区はこの夢夜の国の無法都市でも寒い所に位置する。


 夢夜の国に入り、一番最初にある地区だ。基本この場所はメインが風俗の店だ。ユイはそのような地区を今歩いている。


 「あら!。ユイ様こんにちは!!」

 「あらまぁこんにちは」

 「ユイ様だ!!」

 「ユイ様ですよ!」


 白の支配者ユイは皆からの評判がかなり良い、力と恐怖では一切支配せずに皆の暮らしやすい地区に育てあげた本人だからだ。


 そんなユイは白の塔の入り口にたどり着いた。大きな声で「ユイです」と大声を出すとみるみるうちに鉄の大きなドアが開き出迎えてくれたのはユイ直轄部隊の

七白雪しちしろゆき》だった。彼らは片膝をつき頭を下げてユイが通るのを待っている。


 ユイは自室に戻り一息をつく、この部屋は許可なく来ることを禁じているため誰もこないユイただ一人の自由な空間だ。そんな空間にポツリとささやく名前……。


 「……ルクスちゃん。生きていたのね」

 「七白、来てください」

 「ッハ」


 風音も無い中無音でそこに現れる七白の一人、名を《ミチル》と言う。


 「ミチルよ……。この方を監視して情報を取ってきてほしいの」

 「もちろんですが、ユイ様直々に知りたい人とは珍しいですな」

 「そうね。私の恋人?なのかな」

 「こ!恋人ですか!!」

 「冗談よ冗談。それでだけど、監視と情報この二つから連想されるのは尋問なんだけど今回の監視は手を一切加えたらいけない、隠れて隠密で調査をしてほしい」

 「それは分かりました、それもまた珍しい」

 「理由は簡単よ、おそらく七白では全く相手にならないからよ。では行っていいよ」

 「ッハ」


 また風音が無く立ち去った隠密担当のミチル。出て行ったのを確認したユイは寂しそうにルクスの名前を言う。


 「ルクス……助けて」


 風音なく走るミチルは目標のルクスの場所までやってきた。ミチルの特殊能力である《追跡者レイティング》で場所はあっさり分かった。


 「奴隷商に居る……」


 ミチルは奴隷商の屋根に着地して壁越しでルクスを確認した。


 「ではでは、ユイ様が言うほどの者……この目で……な!。なんだあれは……」


 


 

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