第22話 白の塔

 『やば!。めっちゃ可愛いじゃん』


 レイラとシュリの声が部屋中に響きわたる。ルクスはベットに寝っ転がっていたためこちらに体を起こしその方向を見る。


 「いいね」


 その一言にレイラがツッコミを入れる。そうルクス達の目の前に居たのは昨夜、青の塔の支配下にある奴隷商をルクスが破壊した時に助けた子供だった。


 その子供は金髪で目が綺麗な赤色をしていた。


 「ねぇーねぇー。きみ、名前なんて言うの?」

 

 少女はゆっくりだが一言ずつしゃべる。それもそうだこの子は人間種にひどい目にあわされたばっかりだし、怖くなるのも当然だがレイラは妖精族だ。妖精族特有の何かがあるのだろう少女はレイラになついたのだ。


 「お姉ちゃんにお名前教えてくれる?」

 「……わたしの名前は……」

 「この反応……名前がないのか」


 レイラはそのことを悟ってルクスとシュリに相談をする。ルクスはすでに名前を考えていたらしい。一応念のためその名前を聞くとレイラは良い反応をした。


 「きみは今からカノンだ!」

 「……私、カノン……」

 「そうカノン!」


 カノンは嬉しそうにしていた。そこで何もしないでこのパーティーに入れておくのは危険なためルクスはレイラを連れて部屋の外で話し合いをした。


 「レイラ。カノンはシュリの元で戦闘訓練をさせておかないか?」

 「ルクスの意見は分かった。けど……なんでまた戦闘なんて危ない事を」

 「理由はいくつかあるが、絶対的理由はあの子には秘められた力が眠っている。そしてシュリはそれを引き出せることができるんだ」

 「ルクスが言うなら本当か……。そしてもう一つ理由があるのでしょ?」

 「うん……。この後急だが、俺とレイラは白の塔に行く」

 「え……?」


 とりあえずカノンの事は丸く収まったが、白の塔の件は流石にレイラは混乱した。昨晩ルクスの元に現れたミチルと言う女性は確かに拝見したいと申し出てきた。レイラにはミチルの事も話して、ユイの事も全て了承を得た。


 「今夜白の塔に行く」

 「分かったわルクス」


 白の塔の場所はこのサリエス教国の中心街を始めに、正門の方向に進んでいけばある場所だ。ルクス達は白の領域に来た。


 「ここは少し寒いのね」

 「うん。確かに寒い」


 白の塔周辺はユイの影響なのか塔の影響なのか分からないが口から白い息が出るほどには寒かった。歩いていくと後に明らかに雰囲気が変わっている場所に来た。そうここがユイが仕切る白の塔なのだ。


 「お前たちは誰だ!」

 「怪しいな……」


 なんかいるそう思ったルクスが一つ門番に言った。


 「俺、ユイに呼ばれてきたんだ」

 「うそをつけ!。ユイ様がお前たちみたいなやつらを呼ぶはずがない」


 そうだな、そう思ったルクスに向かって門番の一人が声をあげた。


 「不審な者だ!。捕らえろ!!」


 門番の声を聴いて周りから約30人ぐらいの兵士が出てきた。そしてルクスとレイラの周りに円を描くかのように武器を持ち囲った。


 「ねぇレイラこれは向こうが仕掛けたから俺やっていい?」

 「確かにやられたからねユイさんにはあとで事情を話しましょうか」


 レイラに許可をもらったルクスは容赦なくスキルを放つ準備をする。兵士たちはその間にルクスを捕らえようとルクス目掛けて走ってきた。


 「兵士たち相手が悪かったわね……」


 レイラは目を瞑った。

 

 「破壊演算ロークレイジング――」


 ルクスが周囲殲滅技しゅういせんめつスキルを放とうとした瞬間大声で可愛い声が聞こえた。それは周囲の兵士が全員止まるほどだった。


 「皆のども止まれ!」

 「ルクス様すみません!」

 『え?』


 兵士たちが戸惑うともわかる。不審な人物をユイが様呼びでするのは兵士たちにとっては混乱の要因だった。ユイはルクスに兵士が刃を向けたことを心から誤ったそれに続いて兵士たちは自身が持っている武器をルクスの足元に置いて頭を深々と下げた。


 「ルクス様すみません……私の説明不足で兵士が刃を向かせたことを心から謝罪いたしたいです」

 「いいよ、俺もスキルを撃つほどではなかったし……」

 「はぁ、ひと安心だねルクス」


 そうしてユイは兵士らに、ルクスがどのような人物でどれほど強いのか説明してくれたがそれがおかげで、兵士らはルクスが通ったらぶるぶると震えて頭を下げるようになった。


 「では行きましょうか」


 ユイは白の塔の最上階である自身の部屋に二人を招き入れた。そこは最上階だけあってとても綺麗だった。右に見えるのが青の塔、左に見えるのが赤の塔だった。


 「ところで気になったけど……ユイ、お前なんでここの支配人になっているのだ」

 

 ルクスにはなぜユイの事をこんなにも知っているのか分からなかったでも、なぜか頭に勝手に入り込むユイとの思いでこれが謎で不思議がっていた。


 ユイは真剣な表情になった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る