第37話 急な行方知らず

 神人との一戦が終わり、神人によりルクス達の処遇を考え直すとの結果が出た聖王国はルクスの存在を肯定する動きを見せた。


 「やっとだね。ルクスとリヘン」

 「そうですね。僕が覚醒できたのもお二人さまのおかげですよ!ワハハ」


 ルクスを除いて二人はニッコリと笑っていたがルクスの表情はまだ警戒を解けていない。


 「ルクス! ひとまず一息つきましょうよ!」

 「そうですよ!!」


 レイラは少し貯めていた息を吐いて気を取り戻しニッコリと二人を見て笑っていた。だがルクスの顔の奥には雲行きの怪しい感情が取れていなかった。


 「そして神人達が記憶の書庫の出入りを許可しているからもうあとは楽だね!」

 「ルクスさんも記憶の書庫に行きますか?」


 ルクスはニッコリと笑いながら「いかないよ」といった。


 「リヘンここで一つお勉強ね! 記憶の書庫にはもちろん記憶を保存しているのだけど。保存されている記憶の持ち主が入ることができないの」

 「そうだったんですか。すみません!」


 リヘンが謝ると二人はケラケラと笑っていた。ルクス達はもう必要のない仮拠点を出て聖王国に向かった。前までは消滅対象として狙われていたルクスとその一行だが今では聖王国の国賓として扱われている。これにはびっくりした。


 「ルクス様そしてその御一行様先週は大変失礼しました……。神人様たちからの話で善と判断して。その礼であなた様御一行を国賓とさせていただきました。どうぞごゆっくりしていってください」


 ルクスはこの手のことに慣れておらず少し困惑したがそれにきちんと対応できるレイラはやっぱりすごい。


 「でもまぁこのような部屋を用意してくれたことはありがたいですけど僕こんな綺麗な部屋初めてですよ」

 「実は私もなの」

 「……」


 やはりルクスは何かをずっと考えているようで怪しい。すごく怪しい。レイラはそのルクスの異変に気が付いていたが内容までは分からなかった。


 「ルクス何を考えているの? 悩んでいるんだったら私たちに話して。少しは楽になるかもよ」

 「いや……」

 「そうですよ話してください」


 ルクスは頭を抱えて悩んだ。


 (でもこれを二人に話して何になるんだ? あいつは……あいつは……。いや言えない……)


 ルクスは二人に相談しなかった。そして今日は大人しくベットで寝た。


 「んん~! みんなおはよ~」

 「大変です! レイラさん」

 「どうかしたぁ~」

 「大変です!」

 「だから内容は……」

 「ルクスさんが……」

 「え?」


 リヘンが教えてくれた事を聞いてレイラは冷や汗をかいた。今までこんな事なかった。なんでなんで?。レイラは頭をフル回転させて考え、単純に考えると私たちには言えない何らかの闇がある。それか、二人を巻き込みたくない事がある。この二つに絞られた。


 リヘンが床に落ちた紙を拾うと、そこにはルクスの書置きが置いてあった。それを見た二人は気が付いたら顔が真っ青になっていた。


 〔レイラとリヘンへ、俺の最後のわがままを聞いてください。簡潔に言います。いますぐ聖王国の国王と周辺の国家にこの大地から避難してくれとお伝えください。そしてありがとう。今まで俺と一緒に冒険してくれて……二人はもう強者です。みんな本当にありがとうございました。さようなら〕


 「うそでしょ……。さようならって……」

 「ルクス……さ……ん。グスン」

 「とりあえず、国王と周辺国家にこのことを伝えにいこう!」


 レイラは周辺国家へリヘンは国王へこの緊急事態を知らせに言った。国王はすんなりとその事態を飲み込んでくれた。そして置手紙を見て考え、何かしらの敵が来ると言い神人を貸してくれた。周辺国家も同様に避難して、大量の超一流の冒険者をよこしてくれた。


 「イヒヒこれは、リヘン殿とレイラ殿ではないですかイヒヒ」

 「地力ではないですか」

 「イヒヒ名前を覚えてくれてありがたいヒヒ」

 「あの件では失礼したな。レイラ殿たち。あのルクスが一人で戦いに……。我もすこし驚いたぞ」

 「烈力さん!」

 「そなたがリヘンか! 驚いたぞ。お前があの雷帝エンブレムが宿っていたとは」


 各神人がやってきた。そして心力は部屋の中で指令をしているためここには来ない事を事前に教えてくれた。少し時間がたち残りの二人が来た。


 「ルクスが私たちを連れて行かないほど強い相手とは気になるわね……」

 「極例よせ。お前は覇気オーラが違う。勘違いされてしまうぞ」

 「隊長だって思っているんでしょ?」

 「ま、まぁ」


 残りの煉獄の創造主隊長と完全なる死極例が合流した。それとわざわざ別の大地から来てくれたユイとヒメカも居た。


 「ルクス様が急にいなくなったことを聞いて駆けつけました」

 「私も同じです……」


 そして国王が室内広場までやってきた。その広場は軽く五千人以上を収容できる大きさで天井には無数のシャンデリアが置かれているそんな広場で最後の士気上げが始まる。


 「皆のども、今回このような緊急事態に集まり感謝する。そして別の大地の方々もそれ以上に感謝する。今回はあの生きる伝説と言われたルクス殿が今朝この場からいなくなった。そしてそこには意味深な置手紙が置かれていた。そこで我は裏に強大な敵がいると考え今回招集した。皆のども、ルクス殿を助けるぞ!! 」


 国王の完璧なカリスマ力と、完璧な演説でその場の士気を最大限まで引き上げた。


 「ウフフ……」

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