第25話 開戦

 「お前ら準備は良いか!!」


 夜の中に響き渡る声は誰もがその声に気づけるほど大きかった。その声の主は青の塔の支配者リッカだった。それに続いて人数に負けじと大声をあげる兵士たち。


 「お前ら相手は白一匹だ!。こんなのに負けんじゃねぇーぞ!!」

 『おぉぉぉぉ!!!!!」


 それは流石の支配者だなと思えるほどカリスマ性にあふれていた。青の塔は流石、猫族ガロウなだけあって最高と言っていいほど火力が高い。あたりを見回しても体格の良い筋肉まみれの兵士がずらずらと並んでいる。そのような中で一人だけ痩せている者がいた。


 おそらくこれがリッカだろう。体格に反してかなりの強者と知れ渡っているらしい。


 「では皆のどもこの戦に絶対に勝ちましょう。我らが白は最強です!」

 『そうだな!』

 『俺たちは最強だ!!』


 反対に白の方は戦前なのにかなり雰囲気がふわふわしている。これに関しては白の支配者ユイの影響だろう。正直に今回はユイだけでは勝ち目がなかっただろう。それはユイ自身も分かっているが、今回はユイの先生でもあるレイラとルクスが仲間になった勝機は見えてきたのだ。


 「皆さん今回は強力な助っ人もいます」

 「よろしくお願いします……」

 「よろしく」


 高台に上ってきたのはもちろんレイラとルクスだった。レイラは美人過ぎて兵士たちが一斉に目を向ける様だ、それとルクスは恐ろしい覇気オーラを纏っているためかなり怖がられている。


 「私はレイラと言う者です。そしてこちらが私の相棒のルクスです」


 レイラは自身の自己紹介とルクスの自己紹介を代わりにした。それに続いてユイは後付けをする。


 「レイラ様は、私と同じ氷系統のエキスパートです。それに対してルクス様は一言で言うと化け物です」


 ユイが気恥ずかしい説明をした。レイラは少し顔を赤くし、ルクスはそっぽを向いている。


 あれから何分たっただろうか。戦開始の合図がサリエス教国全体になり始めた。いきなり範囲殲滅技はんいせんめつスキルが飛んできた。おそらく赤の《火の雨ファイヤーレイン》だろうか。


 だがそのスキルは兵士たちに何一つ傷を負わせることはなかった。


 「《氷結之壁アイスウォール》」


 兵士たちは一点に目をやる。なぜ傷を負わなかったのかすぐに理由は分かった。それはレイラのおかげだったのさ。


 「レイラ。俺先に青に行くね」

 「いいわよ。この場所は任せて」


 ルクスは暴れる許可をレイラからもらい。近くにいた兵士たちが気づかない速さでその場をさった。大体の兵士はこの速さでルクスの強さがあまりにも強大なのが理解した。


 ヒューヒューと移動するときに聞こえる風が少し鬱陶しくなってきた。赤の塔の兵士たちは基本魔法に特化しているため。対空戦を得意とするが遠目でルクスを見つけた兵士が攻撃開始の合図でルクスに魔法を放つ。


 「お前ら一人で飛んできている馬鹿がいるぞ!」


 兵士たちはルクスの強さを知らないため簡単そうに魔法を使いルクスに攻撃をするがなぜかすべての魔法は命中しているはずなのに倒れない。その理由はすぐわかることになる。


 「君、目ついている?」


 ある兵士の耳元で知らない声が聞こえた。その兵士は後ろを向くと尻を地面に叩きつけた。


 「な、なんでだ!!」


 その声に周りにいた兵士がこちらに注目する。


 「魔法は当たっているはずなのに!!」


 兵士の不思議な疑問にやさしい声でルクスはその疑問を晴らすことにした。


 「あぁ、そんな事ね。あれは俺の幻影……さっきからずっと後ろに居たけど気づいてくれなかったから自分から晒すことにしたの」

 「バ、バケモノだ!!!!」


 兵士がたったそれだけの事で戦意喪失し、その場から走って逃げたがそれを許すほどルクスは甘くなかった。


 「《絶望之手ダーウィンタッチ》」


 その一言を発して逃げた兵士を鎧の上から触れた。たったそれだけだった……。その兵士は急に倒れてもがき苦しんでいる。それをまじかで見た兵士全員仲間の無念を晴らすためにルクスに刃を向けるがルクスはすぐに次のスキルを発動した。


 「《冷酷斬りサラスティック》」


 もう訳が分からない。周りの兵士が一瞬で赤く染まりそのまま歩いて青の元に向かうルクスであった。


 一方レイラ達は赤と交戦中だ。


 もちろんこちらには《滅亡級ルイン》であるレイラがいるため戦況は良いほうだった。だがレイラは周り一帯をジロジロと見渡している。


 「なんで強そうなやつが居ないんだろう)


 レイラの疑問はかなりの兵士を倒しているのに、誰一人として近衛部隊が来ないのが不思議がっていた。


 そうこうしている間にレイラの頭上に向けて一本の小さなガラスみたいなものが降ってきた。レイラはそれに気づきすぐさま結界を展開するが。着弾したと同時に猛烈な爆風が巻き散った。


 幸いレイラの結界は無傷だが周りの兵士はほぼ全滅してしまった。レイラはすでにキレそうになっていた。もし自分が皆に結界を渡していたら死ぬことはなかった。おそらくこんなことを思っているのだろう。


 土埃が徐々に薄れてきてそこから人影が現れた。そこにレイラは目を合わせていた。


 「それは素晴らしい結界……。儂がもらいましょうぞ……」

 「何者だ!!」

 「儂は赤の塔近衛隊である、紅蓮会が一人【爆風ボンバー リフィー】と申します……あなたを葬るものの名です……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る