第40話 無敵の女王

 ルクスは全ての妨害スキルを放ったがエリアルに効いている様子はないが確かに吸い取っている。だがエリアルは微動だにしない。普通なら魔力などを吸われれば体から力が抜けるはずだがエリアルに限ってはその逆かもしれない。


 「力が増している……」

 「あらら、この程度の障壁で私を止められると?」

 「いや、思ってない」

 「正直じゃないんだから……」


 エリアルは圧倒的な力を持っているがなぜか防戦一方だった。それがなぜかは誰も知らない。地上組の人たちも下から援助攻撃を送ってくれているがそれは無に等しいエリアルは一つの攻撃を放つ。


 「ここら一帯を燃やせ《大炎弾メガフレア》」


 エリアルが何をしたのかは分からない。だが何かがおかしい、たった一つの動作それも指を前に突き出しているだけでここら一帯が全て焼け野原になるのは別次元すぎた。地上組は何とか結界でどうにかなったがそれでも被害が大きい。


 「ルクス! 私たちも助太刀するよ!!」


 レイラの参戦の声にルクスは拒否した。


 「レイラ……。絶対に来るな、それと神人もだ……お前たちではこいつを倒せない……」


 ルクスは頭から血を流しており、薄っすらと見える真紅色の目は鋭くレイラをにらみながら全力で否定した。


 「はぁはぁ。師匠いやエリアルお前は……俺には勝てないよ《神聖審査ジャッジメント》」


 ルクスの大信仰系魔法はフィールど全体に輝きをうつした。超弱体化を受けるエリアルだがそれでもルクスを押している。エリアルはルクスの能力を大幅に上回っていたのだ。


 もうだめかもしれない……。エリアルが次なる刃をルクスに向けている。一方ルクスは空中で体が動けずにいた。ルクスは内心あきらめかけていた、そして刃が振るわれた。


 「ルクス……私はあなたの事を信じているよ」

 「え……」


 エリアルが放った斬撃はルクスの首に当たることはなかった。極例がそれを阻止した。どうやらルクスには後ろ盾が豊富らしい。ルクスが諦めたら別の奴が被害を受ける。


 「あ……ごめんよ。極例……俺が間違っていた。あはは、そうだね俺はあいつから世界を守らないといけないんだ」


 エリアルは上空から笑ってこちらを見ている。そんなエリアルにルクスは今まで出したことが無いオーラを放った。


 「ルクスちゃんまだ分からないの? あなたじゃ私に勝てない。無駄な抵抗はやめて大人しく死になさい」

 「え……俺が勝てない? そんな冗談いつから言えるの?」


 ルクスは今使える自身の最大戦力を全てここに使った。


 「俺が負けるとか面白いこと言うなよ。あれいま俺笑っているの? あぁこれ笑っていないわ……まぁ良い、お前を殺す。《武装魔王悪魔剣ブルンクルス》!!」


 周囲から集まる謎のエネルギーをその剣の刀身に集まる。それが一定量を超えると次は紫色とどんどん光輝いてくる。


 「ルクス様……あれは、世界を破滅へと追いやった剣……」

 「ユイ殿、それは一体?」

 「今までも武装魔王悪魔剣ブルンクルスを使っていましたが、ある一定条件を満たすと次はその上位互換が現れるのです。それがあの紫色に輝いている剣です」

 「ではここはどうなるんですか?」

 「おそらくですけど、一瞬で焦土に変貌するでしょう」


 その事をしったヒメカは一旦その剣の正体とこの場が焦土になることを緊急で伝えた。みんなの意見はすぐに一致した。逃げるのではない逆に受け止めることにした。これは何もできない人類が唯一世界に貢献できること。戦えないならその戦いを見ていれば良い。


 「おぉ、ルクスちゃんのその剣は少しまずいね」

 「うるさい、もう死んでくれ」


 ルクスは初めてエリアルの背後に回れた。そしてそのまま袈裟に斬ろうとするがエリアルはそれを軽々と受け止めてしまった。それを見たルクスと地上組は呆然としていた。


 剣が交わる際に発生する紫の電撃はあたり一帯を燃えつくした。山脈は剣から毎回のように放たれる紫電しでんで正直原型をとどめていない。


 「皆! 手を出すなと言われているけど正直行きたいよね!」

 『おー!!!!』

 「皆ルクスを助けたいよね!!!」

 『お!!!!!』

 「では行くしかないよね!!!」

 『いくぞ!!!!』


 まったく。団結力というものは怖いものだな。絶対に勝てるはずのない相手に無謀にも戦うってでもそんな仲間が本当は欲しかったでもそれが今かなった。ルクスは涙を一粒流した。そうすると急に上空から声が聞こえた。


 「これは世界の声?」

 『この世を管理する者。そして今この時を持って最終調整を完了しました。覚醒条件の親愛なる仲間を獲得。これにて覚醒を開始』


 地上組とエリアルは口をあけっぱなしにしている。初めて聞いた世界の声はそう言った。『覚醒』と言う言葉……。


 「ルクスは今まで、現役時代までも覚醒をしていなかった……。そしてあの強さ……」


 レイラ達に勝機は見えた。だがそこで異変がまたもや起きる。神人の一人である隊長が空に指をさした。


 「皆空を見てくれ。ルクス殿が……」


 ルクスは地面に向けてゆっくりと降下していた。それも自分からやっているのではなくて自然に、勝手に体がそうしているような感じで……。

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