第41話 進行し続ける天廊の女王

 「みんな早くルクスを運んで!!」


 レイラの指示で神人は全員前線に立ちそしてサリエス教国のヒメカとユイはルクスの看病、冒険者は見回り警備そしてレイラは作戦会議の長。これで防衛前線ができた。


 ルクスは聖王国の中心部に運ばれている。城壁の上には一流冒険者たちが弓や魔術師を大量に設置している。


 「レイラ様。ルクス様を運び終えました……」

 「ご苦労です。ヒメカさんとユイさんは今どのような対応をしてますか?」

 「ヒメカ様とユイ様は全力を持って医療に専念しています」


 ある一人の冒険者が近況報告をしにレイラの元へ訪れた。そしてルクスが良い方向へ向かっていることがレイラの耳に入る。そしてもう一人の冒険者が走って戦力会議室に足を運んだ。


 「レイラ様。城外の報告を致します」

 「話してください」

 「はい。今はまだ誰もいない模様。そして怪しい人影も見当たらないです」


 レイラは少し怪しく感じた。さっきまで近くにいたエリアルが急にいなくなるなどおかしい。レイラは緊急守備形態に移行するように指示をした。


 「わ、分かりました!」


 レイラの考えは的中した。レイラが居る建物が急激に揺れた。


 「何が起きているの?」

 「すみません。レイラ様、上空に謎の発光体が出現していきなり爆発しました」


 レイラは椅子から立ち上がり、すぐさま外を窓越しで確認した。それを見たレイラは戦慄してしまった。


 「うそでしょ……」


 そこにはボロボロになっている神人と周囲が破壊尽くされた建物の光景が目に入った。


 神人がレイラに何か言おうとしているが何も聞こえない。レイラは考えた。口の動きを読む。


 「なに……ルクスが危ない……」


 まさかの事態。どうやらエリアルがルクスの元に向かっているらしい。そして神人達はその進行を止めるために立ち向かったが圧倒されてしまったらしい。


 「私のルクスに何するの? エリアルさん」

 「誰でしょうか?」

 「今はレイラが居ないから私のもの……エリアルは私が潰す……」

 「へぇ~自信あるのね」


 そこで極例とエリアルの猛烈な戦闘が始まった。今頃ルクスは未だに目がつぶっている。ルクスの居場所は地下で音も聞こえないところだが外での轟音は地下にも響くユイとヒメカはそれでも看病を続ける。


 「死んでしまえ。《死の豪雨デスレイン》」


 天から降り注ぐ黒い雨はエリアルに直撃しているが何も動揺せずに極例に近づくエリアルは強かったが。その理由を極例は気づいていた。


 「風か……」

 「お! よくわかったね。《嵐百旋風ストームテンペスト》」


 急激に風が強くなる一方その風を耐えれるほど極例は強くなかった。小柄な体型が悪をついた。肌に切りかかる風の刃は少しずつ極例の体を切り刻む。血が止まらない。極例はそのまま後ろに下がり自身の武器である大剣を持ちエリアルの首に投げつける。


 「くらえ!」

 「ふんこんなもの――」

 「くくく。騙されたね《煉獄呪ひゃくののろい》」


 極例のカウンターは完璧にエリアルに刺さった。今までなかった体を殴る感覚が体中に広がった。そしてエリアルは殴られた勢いで後ろに下がってしまった。


 「ふぅ~。初めてだよルクス以外に体に傷をつけられたのは」

 「……だからなに?」

 「あなたは私が相手をする価値があると言う事よ」

 「……」


 敵と認めたエリアルは上空に極例を連れて行き異空間を展開した。この中では誰にも邪魔はされないしこちらで出した被害は外にも影響を与えない。


 「なるほど。死んでも誰も助けてくれないと言うことか……」

 「お察しの通りだね」


 異空間だろうか……。エリアルの雰囲気がまるで別物になった。肌でも感じるこの気迫は今まで相手したことが無いほどの相手だった。極例は少し後ろに下がる。それを見ていたのかエリアルが先手をとる。


 「凍てつけ《神秘の囁きかみのじょげん》」


 極例はエリアルの放った氷属性の攻撃を止めようと火属性の結界を張ろうとしたが極例は少し考えた。


 (いやまって。相手は氷のはずだが……なぜ光になるんだ)


 考えている内に極例は天井を見ていた。体が動かないなんでか知らないが本当に動かない指一つも。そうしているとエリアルはゆっくりと歩いて近づいてくる。


 (あぁ。もうだめかもしれない。初めて当たった強者ルクスともう一度別れを告げたかった。いやもういいか……ありがとうルクス……)


 極例はあきらめかけていたその時だ。


 「こんなところに異空間やはり君は俺の師匠にはふさわしくないな……」


 極例の耳に聞こえたその声は神様かと思えるほどだった。とうとう私にも神様が宿ったそう感じた。すると完全隔離されていたはずの異空間がじわじわと解除されていく。本当に分からない。だがそこには居た。真紅の瞳に黒髪そして伝説の黒翼……かつて伝説に残された人物が……。


 (やはり伝説は私を救いに来たのか……)

 「ほらもう大丈夫ここで休んで」


 謎の男が青白い光を出すとここに入るように指示をした。それに従う極例がその中に入るとそこに広がっていた光景はルクスが看病されていた地下室だった。


 「あれ私はなぜ……」

 「もう大丈夫ですよ極例さん。あの子が覚醒しました」

 「覚醒……したのか……。そうか良かった私たちは天廊の女王からの攻撃を耐えたんだ……」

 「そうです。やはり神人さんは凄いです!」

 「ありがとう……それと今度からは極例ではなく【ミリア】と呼んでくれ。私の真の名だ」

 「分かりましたミリアさん」


 そして復活した最強の英雄……。

 



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