第42話 覚醒ルクス
ルクスが地下室からいなくなった。それは別に悪い意味でもない。ヒメカとユイの看病と極例ミリア達によるエリアルの手厚い足止めのおかげで見事にルクスの覚醒化が成功した。
これはまだ極例ミリアが異空間でエリアルと戦闘をしている最中の話だ。
「ヒメカさん! ルクス様の状態はいかがなものでしょうか!」
「はぁ~。安心してくださいユイさん。ルクス様は今はゆっくりと寝ていますよ」
そんな会話が続いて、そとの状況も次第に悪化していた。異空間越しでも伝わる強烈な殺気は常人には耐えられなかった。その証拠に一流の冒険者の大半が地面に膝をついて震えている。これを見たらだれでも恐怖と言うのが伝わるであろう。
「ユイさん。外は今どのような感じになっているのですか?」
「分かりました。私の
ユイはその豊満な胸と服をあげ、サラサラな白髪の髪を揺らして自身の
「《
ユイの透き通った声が地下の狭い部屋に響き渡った。そうすると空中に一つの鏡が出てきてそこを覗くと異空間にとらわれた極例の姿が映った。体はボロボロで体中から血が流れ出ている。その一方エリアルは笑いながら相手をしている。
「極例殿でもこれとは……」
「一体ルクス様の師匠はどれほどのものでしょう……」
ドアの奥の方から聞こえる足音は次第に激しくこちらに向かってきている。ドドドガシャ!。
「ユイ様ヒメカ様大変です!」
「どうしたのですか!?」
「神人様たちが――」
冒険者の声を遮るようにヒメカは話を横切った。
「――それより! 自分の怪我を先に気にしてください!」
「あなたこちらへ来てください」
冒険者は早く話したい雰囲気を出していたが、そのまま放置したら出血死するほどの大怪我を負っていた。よくこの地下まで走ってこれたぐらいだ。
「そしてどうしたのですか?」
「すみません……。神人様達でもかなり苦戦している魔獣が数千と異空間から放たれています……」
『なに!』
ヒメカとユイがその場を置いて外に救援に行こうとした瞬間今までいなかった謎の者が待ったをかけた。
「譲さんたちはルク……この子の看病をしておいてくれ」
「あなたは一体誰ですか?」
ユイの冷静な質問に黄色いフードを深くかぶった謎の人物が答える。
「名はない。だが助けたいと思った……」
ヒメカとユイは互いに綺麗な目を見ながら賭けてみることに同意した。男は光の速さでその場去った。
数分後また冒険者が報告に来た。
「謎の魔獣全滅確認しました!」
その報告と同時に突如ヒメカの背後に現れた黄色いフードを深くかぶった男はルクスに触れようとしていた。
「恩人様でもルクス様に触れるのはだめです!」
ユイはその美貌とは思えないほど鋭い眼光を謎の男に向けた。だがその男はなにも動揺することなくルクスに触れる。男は自身のポケットから一つの瓶を取り出した。
「これを使えばルクスが治る」
「え……」
あまりにも信用しがたいものを言う。でも飲ませたとたんルクスの雰囲気が変わった。そしてまた天の声が聞こえた。
「なに……覚醒成功? あの男が飲ませた薬で?」
信じられない。そして黄色のフードを被った男はルクスに一言告げるようにユイたちに告げてその場から去ってしまった。
「あいつを必ず倒してくれ?」
「なんでこんな内容をわざわざ……」
ルクスはベットから体を起こした。その時のルクスは何かおかしかった。今までにはない雰囲気、それは猛烈に心に伝わる殺戮の気持ちそのものだった。
「必ず倒してくれ? まさか!」
ルクスは何かを思い出したようにしゃべりだした。結論から言うとさっきの黄色のフードを被った人はまさかの本物の雷帝エンブレムその人だった。世間一般的には存在が消失したという話が出回っている。
エンブレムのおかげで覚醒化に成功したルクスは支度の準備をし始める。そろそろ限界であろう極例を助ける準備を、異空間は名前の通り異空という場所に一時的に結界、部屋を作るみたいなものだ。そしてその場所にはほかには悪魔やその他の化け物がたくさん収容されている空間だ。
「では皆行ってくる」
「分かった。気を付けてね!」
ルクスは目に留まらぬ速度でその場から去った。
「ルクス……お前は俺があった中で一番強かった者だ……どうかあいつに勝ってくれ……」
ルクスは異空間の結界が張られている場所にたどり着いた。周りの空気は非常に重いが今のルクスはそれを気にするまでもない。
「行くぞ……エリアル」
その言葉でどんどん周りの雲がルクスを囲うように集まってくる。そして一本の大きな雷撃がルクスに直撃した。ゴォゴォ!という音は周囲の木をなぎ倒す勢いだった正直もうここは持たないかもしれないが最後のルクスの本気をだす場にはふさわしい。
「……《
地上に居た人たちは驚いた。この世界に存在しないと思っていた最強の
「待っていろよ……エリアル……」
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