第18話 囚われの少女

 「……やめてください」


 幼い声の少女が寂しそうな声でしゃべる。周りからの罵倒もかなり多かった。


 「すみませんすみません!」


 激しい雨の中聞こえる幼い声はまるで見てられないほどに辛かった。幼い声の持ち主の周りには複数の影がある。どうやらこの幼い声の持ち主は何かをやらかして罰を受けていたのかもしれない。


 ガシャン!そんな音が狭く暗い廊下に響き渡る。


 「……っくすん。どうせ私なんか助けてくれる方いない」


 そこは寒く暗く生き物の人権を全て奪った牢獄みたいな場所だった。おそらくだがこの少女はなにもしていない。このサリエス教国は夜の街……その特有の金があれば何でもできるこんなことが許されている国だ。


 「私なんでこんなことになったの……お父さん、お母さん。どこ行ったの……」 

 「おいコラ!うるせぇぞガキが!!」


 また罵倒だ。少女はこの牢獄では会話をしたらいけないのだ。少女は自分の目の前の牢を覗くと吊るされてタコ殴りにされた後の状態で夢魔族サキュバスを放置している。こんな少女にはかなりキツイ光景だ。


 その次の日もガラの悪い男らは少女達を使い盗みを働かせている。別にこの夢夜の国では違法なことではない。この街はまさにだからだ。


 だがいくら無法都市でも盗みをすれば当然誰もが怒る。捕まれば当然ボコボコにされるだが逆に言うと捕まらなければ何をしても良いのだ。


 少女が監禁されている場所はこの闇夜の国の奴隷商だ。毎晩毎晩誰かが奴隷を求めやってくる。もちろん夜の街だからここに居る奴隷は戦闘用ではない。


 そう性奴隷だ。あいにく捕らわれている種類はかなり美人の種族だ。妖精族、エルフ族、夢魔族その種類は様々だ。どこで捕らえてきたかは定かではないが。たぶんかなり強引な方法だろう。


 「こんな私たちを助けてくれる方はいるのですか……」

 「いるかもしれないんだぞ……」

 「この生活はキツイものがあります……」


 少女含めいろいろな種族もかなりこの生活には不満があるらしい。でもどうせ買ってくれてもサリエス教国では性を行うものとして扱われるだけ。いっそのこと舌を自ら切り死にたいぐらいだ。と思っているほどだ。


 どんな無法都市とは言え、この奴隷売買を許しているのはある一角にしか過ぎない。ほかの区画ではもちろん奴隷売買は禁止されている。


 この場所の支配権は青の塔の支配者【猫族ガロウのリッカ】である。

 

 奴隷売買を禁止しているが逆に臓器売買を許可しているのが赤の塔の支配者でもある。【紅妖精インファーサーのヒメカ】だ。


 そして白の塔の支配者ははっきり言って何を許可して、何がダメかを把握していなかった。


 「ねぇーレイラ」

 「はいはいどうしたの?」


 レイラはルクスの面倒見がかなり良い。はたから見たら家族みたいだ。そんなルクスはレイラに話す。


 「奴隷商に行ってみたいんだ」

 「……ど、奴隷商!?!?」


 レイラのその声はミシェリーの経営する宿全体に響き渡る声音だった。廊下の階段からもの凄く大きな音で階段を掛けあがる音がするとドアがドン!と開きシュリが息を荒げていた。


 「ど、どうしたのですか!」

 「ルクスが奴隷商に行ってみたいって」

 「……奴隷商」


 レイラ達は分かっていた。この国の奴隷商は性奴隷しかいないことを……当然レイラは許可を出さないが。「シュリは良い経験になるかもだから行って来たら?」と簡単に言ってくれた。


 「まぁ。ルクスも男の子だしね?」

 「もしあれなら私たちが居ますもんね!」


 シュリの発言に顔を真っ赤にしたレイラがそこには居た。


  夜、レイラとルクスは宿のドアを開き目的地である青の塔の支配下に足を踏み入れる。ルクスたちがいた白の塔の支配下と違った雰囲気があった。


 白の塔の支配下は比較的、冒険者に温厚な人がかなりの数いたが逆に青の塔の支配下はかなり空気がピリついている。


 青の塔はかなり治安が悪いらしい。これなら奴隷を許可するのも納得だ。ルクスたちはテクテクと言う擬音が正しい音を立てて夜闇を歩いていく。一時歩くとルクス達の正面に大きな建物が見えてきた。


 看板には奴隷商と書いていた。ルクスは両開きのドアをガシャリと開けるとそこには先ほどの治安と比べ物にならないほどにきれいに清潔に掃除されていた。


 「あらあらこんにちは~」


 階段の上から聞こえた方に振り向くとそこには男か女か分からないような人が出てきた。


 「今回はどのような件で~」

 「奴隷が見たい」

 「あらぁ~それはありがたい限りです~」

 「ではこちらへ~」


 そう支配人が答えると、その支配人は暖炉の中に手を入れてカチと音を立てた。みるみると先ほどまでは何もなかった壁がゴゴゴゴゴと音を立てて開くのが分かる。


 動いた壁の中から出てきたのは奥深くまで続いている階段だった。支配人とルクス達はどんどんと階段を下っていき、その途中雑談なども加えながら下まで着いた。


 この時レイラには一瞬だけ分かったが多分ほかの人なら気づかなかったであろう。ルクスの考えが戦闘モードに切り替わる瞬間を……

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