第27話 炎の炎帝リッカ

 指令室はピリピリとした空気が漂っていた。その主な原因は謎の人物ルクスの事だろう。赤のヒメカはいつも通り冷静であったがもう一方の青のリッカは少々苛立ちが隠せていなかった。


 バン!と大きな音を立てて机をたたくリッカはヒメカに怒りを鎮めるように促していた。


 「まあまあリッカ殿、ルクスと言う者はバケモノと言うことが分かっただけでいいではないでしょうか」

 「……あ、あぁ」

 「白は私の大切な近衛隊のリフィーを倒しました。これは仕返しにルクスを殺すべきでしょう」

 「でも殺せんのかあんな奴?」

 「リッカ殿、私は何を得意としている者でしょうか?」

 「まぁ、それもそうだな」


 リッカはヒメカの得意としている事が分かるのでこの意見を飲んだ。ヒメカはサポートに通ずるものがある。


 ヒメカがリッカに出した提案はいたって簡単なものだった。


 「ではリッカ殿、私はあなた殿に私の使える全ての補助技ほじょスキルを掛けます。そしてあなた殿は残された青塔七剣聖せいとうしちけんせいと一緒にルクスの相手をするというのでどうでしょうか?」

 「いいぜ。完璧だな」


 リッカはヒメカの作戦にすんなりのり、さっそく準備を始めた。コツコツと長い廊下を歩いてくる音がした。その廊下は床にいろんな種類の宝石が埋められているかなり綺麗な廊下だ。そしてドアを開いた。


 「リッカ様、ヒメカ様こちらの準備は整いましたのでいつでも出発出来ましょう」

 「ご苦労だ。青塔七剣聖せいとうしちけんせいの残りの奴らもこの場に連れてこい」

 「ッハ」


 ドアがガシャリと閉まる音が部屋中に響くなか走って残りの者を連れてきた。一時するとまたドアが開いた音がしてそこには6人の異様な覇気オーラを身に纏っている者がそこにはたくさんいた。


 「青塔七剣聖せいとうしちけんせいよくぞ集まってくれました。今から俺は……ゴホン、私は――」

 「リッカ殿、戦闘前だから素に戻したらどうでしょうか?」

 「……あ、うん。そう俺たちは今から謎の者ルクスを討伐しに行く。七剣聖の中でトップの実力を持つテンは情報によるとあっさり殺されたらしい。だから油断は絶対にするな、相手は強い……では行くぞ」

 「ッハ」


 リッカとヒメカはその場から瞬時に消え去った。二人が居なくなった大きな玉座の間は静かな雰囲気が漂っていた。そこで顔の大半を隠している者が一言しゃべった。


 「以前も確かにテンは殺されたと言っていたな……」

 「どれほど強いのでしょうね……楽しみです!!」

 「油断は禁物だぞ!ステアさんや」

 「バルスタンさんも気を付けてね。あぁーでも壁王バーバリアンキングの2つ名を持つバルスタンさんなら大丈夫か!!ゲラゲラ……」


 ゲラゲラと笑う女性はミラ・ステアと言う人物で2つ名が鷹王レンジクイーンと呼ばれている。それもそのはずこの女はどんな距離からでも正確に一撃で標的を射ることができる変な奴だ。


 残りの青塔七剣聖せいとうしちけんせいは全員、青の塔の入り口に集まった。そこではもう準備に取り掛かっている。ヒメカは着実にどんどんリッカに向けて補助魔法を唱えている。


 全て唱え終わったヒメカは一息をつきリッカを見る。


 「これは凄い……」

 「凄いですねリッカ殿」

 「肌でも感じるこの強さ……」


 その場にいる七剣聖は全員鳥肌を立てていた。


 「行くぞお前ら、俺は久しぶりに暴れることができるぜ。俺の2つ名【炎の炎帝】の名においてルクスを討伐するぞ!!」

 『おおおおおお!!!!』


 そうしてその場から消えた赤の塔の者達を見送ったヒメカは一言つぶやいた。


 「……ふふふ。気を付けてくださいね……」


 リッカ一行はものすごいスピードでルクスの元へ向かう。その道中リッカが通った個所全て炎を上げている。これもリッカの特殊能力である《炎之化身ファイヤアゲイスト》の力だろう。


 そのうちリッカ一行はルクスの元へ到着した。そのスピードの反動で周りの建物が即座に倒壊した。


 「あれ、なんだ」


 ルクスは興味なさそうに反応した。それにお構いなしに話をしだすリッカ。


 「お前がルクスか?」

 「そうだよ!。俺がルクスもしかして君リッカかな?」

 「ご明察、俺がお前の探しているリッカであり、私が探している者もルクスお前だよ」

 「へぇー、君がリッカか……。では挨拶がてら」


 そうルクスが言うとリッカの頬に血がついていた。リッカはもちろんその血を振り払うが……。


 「ったく、血か……。お前ら行くぞ!!」


 誰もリッカの答えに反応しない。リッカは不思議そうに周りを見渡すとそこには全員倒れている青塔七剣聖せいとうしちけんせいの無残な姿しか残っていなかった。


 「お……お前、何もんだよ!!」

 「え、たったこれだけでやられるの?」

 「だからお前何者なんだよ!」

 「あぁ、俺?。そうだな俺は友達を傷つける者は容赦しないマンだよ!!」

 「何を言っている……」


 リッカは心底冷や汗をかいていた。リッカ自身も正直これほどの者と相手をしたことがないのでどう戦えばいいのか、どう対策すればいいのか分からなかった。


 「俺はお前ルクスを殺すためにいまここで全力を尽くす!。出てくるんだ……俺の伝説技レジェンドスキル炎獄之操縦者ほのおのげんてんをつどうもの》!!」


 伝説技レジェンドスキルを使うとたちまち地面から溶岩が大量に吹き出し、かなりの広範囲が炎獄と化した。それをみたルクスは感心そうに見ていた。


 「では敬意を払って俺も使うか……。来るんだ!《百知之王メティス》」


 それを聞いたリッカは何かを思い出したような気がした……

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