第19話 のぞき見
「イオ。本当に体は大丈夫なのか? どこも痛いところはないか?どこにも違和感はないか? 何かあればすぐに言うんだぞ。ほら、もう少し寝ていたほうがいい」
一晩立ったが、とにかくバテルは、イオが心配でしょうがない。
シンセンは、問題ない。大成功だといっていた。
それでも前例のないような大規模かつ複雑な
心配なものは心配である。
「ありがとうございます。バテル様。でも、ちょっと心配しすぎですよ。これでも、頑丈なのが私の取柄です。それにずっと背負っていた重りがとれたみたいに、体が軽いんです。早く体を動かしたい。魔力を使ってみたい。寝てなんかいられません」
「そうか。それは良かった」
「バテル様こそ、大丈夫ですか? 相当無茶をしたってシンセン様から聞きました」
「大事なイオの治療で無茶なんて危ない真似はしないさ。全部計画通りだよ。ほら、この通り、ぴんぴんしているだろ、イテテ」
体が、まるで鉛のようだ。一週間ほど寝ずに働き続けたら同じような気分になるだろう。それでも死ぬか生きるかのイオよりは、だいぶましだ。
「ごめんなさい。私のために……」
「謝るのは俺の方だ。もっと早く原因に気づいてやれてれば、もっと確実な手が打てたかもしれない」
「いいえ、バテル様には感謝してもしきれません。でも、ちょっぴり怒っています。バテル様が私に隠し事していたこと」
イオは、少し頬を膨らませ、そっぽを向いてみせる。
「それは……」
「気にしないでください。私は隠し事をされたって、嘘をつかれたって、バテル様が幸せならそれでいいんですから」
イオの寂しげな表情に、バテルの罪悪感は、いよいよ大きくなる。
「ああ、もう二度とこんあ馬鹿なことはしないよ。俺もイオが生きていてくれればそれで幸せだ」
「ふふ」
バテルの心底後悔した表情にイオはいたずらな笑みを浮かべる。
「バテル様……私、本当に嬉しい。孤独から救ってくれただけでも感謝しているのに。あんな前の約束を覚えていてくれたなんて」
「いいんだ。俺だっていつもイオには世話になっている。もっと
恩を返さなくちゃならないな」
二人は体を寄せ合う。共に生きている喜びを分かち合うように。
しばらく抱き合っていると、イオが視線に気づく。
マギアマキナたちが、扉の隙間から覗いているではないか。
「はわわ、あれが大人の関係ですか」
リウィアが、顔を真っ赤にする。
「あわわわ」
いつもは凛としているウルの頬も真っ赤に染まり、目を覆ったまま言葉を発しない。
「最高にラブラブじゃん。見ているこっちが恥ずかしくなってくる」
ルピアは、にやにやと笑っている。
「バテル様にお世継ぎの心配はなさそうですね」
ベリサリウスは、顔色一つ変えずに見ている。
「人間は、成長しないと子供を作れないんじゃなかったか。少し早いんじゃねえの」
ガイウスの肩に乗ったサラシアが心配する。
「お二方ならもう大丈夫だ。さあさあ、ご両人、我々に遠慮はいりませんぞ!」
ガイウスが大音声で言う。
「あら、あらあら、まだ治ったばかり、少しばかり気が早すぎるんじゃなくて」
じっとりと観察するように見つめてくるクレウサと目が合いイオの羞恥心は頂点に達し、
「ご、ごめんなさい!」
勢いよくバテルを跳ね飛ばす。
「私、なんてはしたないことを!」
そのまま、叫びながら研究所を飛び出してしまった。
ルピアやクレウサは、残念そうに首を振る。
「は、早く、助けてくれ」
壁に激突し、資材に埋もれてしまったバテルをマギアマキナたちが助け出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます