第6話 天素と邪素
「おはようございます。師匠」
「朝から騒がしいぞ」
早朝、バテルが森を訪れると銀髪褐色の美少女、シンセンが大あくびをしながら、どこからともなく現れる。
「どんな稽古をするんですか?」
「ふむ、そうじゃな。まずは
バテルは、これまで独学だったが、
「この世界の森羅万象を構成しているものとはなんじゃ」
「
バテルは、石ころを手に取り、錬成陣を展開、石ころが魔力に覆われる。
「
石が水に変わり、バテルの指の間から零れ落ちた。
「ふむ、基礎知識はあるようじゃな。独学でそこまでとはたいしたものじゃ。源素と魔力が、この世のすべての物を形作っている。
そして、ここが多くのものが勘違いしておるところじゃが、
この世界に存在するすべての術の根幹は、魔力による源素の操作。根本的には同じものよ。まあ、武術で言う所の流派のようなものじゃな」
「なるほど確かに、
「どんな術を使うかは。得手不得手、好みの問題じゃな。
しかし、とシンセンは続ける。
「万能というわけではない。
「天素と邪素?」
「おぬしは源素を四属性と言ったが、間違いじゃ。天と邪の源素を合わせて六属性じゃ。天と邪はそれぞれ、
屋敷の蔵書には、書かれていなかった知識だ。
「
「あの魔物が使っていた術か」
「ほれ、試しにあの木を
「はい。水に変えます」
バテルは、木に向かって錬成陣を展開し、魔力を注ぎ込む。しかし、
「うおっ」
錬成陣は制御不能に陥り、割れてしまう。
これまでも条件は不明ながら度々こういうことがあった。
「今言った通りじゃ。
そういうとシンセンは、人差し指を近くの巨木に向けた。
指の先端が、わずかに光ったかと思うと風が吹き抜けて、一枚の大きな葉が宙を舞った。
ひらひらと落ちてくる葉をシンセンは、手に取った。
錬成陣が展開され光ると大きな葉は砂となって風に流されてしまった。
「このように魂から切り離しさえすれば、
バテルはシンセンの意地の悪い声に怯えるが、ようやく謎が解けた。
「なるほど、それで……」
「心当たりがあるようじゃな」
動植物のような魂を持つとされているものには
「さて、座学は、ここまでじゃ」
「え、もう終わりですか」
「源素を感覚的に理解し、魔力の扱いを学ぶ。その基礎さえできれば、どんな術もあとは自分で研鑽を積むだけじゃ。ようは習うより慣れよ、じゃな」
シンセンは、朗らかに笑った。が、修行は、地獄だった。
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