第22話 騎士ゴーレム
「よし、では、始めるか」
「何をするんですか」
イオが小首をかしげる。
「わしの修行は、何事も実践じゃ。体で覚えてもらうぞ。バテルおぬしも付きあえ」
シンセンは、ニヤリと笑った。
「バテルよ。おぬしゴーレムは、どれくらい錬成できる」
「ふふ、俺を侮っているんですか。師匠。俺は、人体再錬成を成し遂げた
「わかりやすく調子に乗りおって、大言壮語を吐きおるわ」
「ゴーレムは、俺の得意中の得意分野。まずは千体くらいでいいですか」
バテルは、
「土のお人形、それに
イオの中の
「百聞は一見に如かずだな。よし、ゴーレム錬成」
バテルは、地面に錬成陣を展開し、起動する。
すると錬成陣に周りの土が集まり、土の人形、ゴーレムができる。
全身鎧の騎士を模した騎士ゴーレムだ。
「命令すれば、ある程度は自律的に行動できる」
ゴーレムは、己を高めることを目標とするシンセンのような道士と違い、どちらかといえば、研究職に近い
それを実戦でも役に立つようにするには、このゴーレムをいかに使いこなせるかが、焦点となるとバテルは考えている。
「わあ、これがバテル様のゴーレム。かっこいいですね」
イオは、ペタペタとゴーレムに触る。
「そうだろう、そうだろう、こいつらには、俺のかっこいいが全部詰まっているからな」
実用だけを考えれば、洗練された鎧のデザインにするのは無駄だ。そこはロマン優先である。
「それで、ここからどうするんです?」
「話は簡単じゃ。バテルがゴーレムを作る。イオが拳で、ひたすらにゴーレムと戦い続ける。これだけじゃ」
「え、流石にまだイオには早すぎませんか」
バテルは、自分の作る騎士ゴーレムの戦闘能力に自信がある。それに引き換え、イオは、戦闘訓練を本格的に受けたことがない。
「くひひ、どうじゃろうな。やってみればわかる」
シンセンは、全く真逆に考えている。
「二人とも全力でやれ。限界まで一切手を抜くな。修行にならんからな」
「イオ。辛くなったらすぐに言うんだぞ」
「イオ。この傲慢なわっぱの鼻柱をへし折ってやれ」
「任せてください。今なら誰にも負ける気がしません」
地獄の訓練が始まった。
スタートの合図とともにバテルは、十体の騎士ゴーレムを作り出し、イオに攻撃を仕掛けさせる。
(もっと出してもいいが、これでも十分すぎるくらいだろう)
騎士ゴーレムたちは、連携しながらイオに襲い掛かる。
「壊すのがもったいないけど、ごめんなさい。私も全力でいきます! たあっ!」
イオが拳を振るうと一瞬うちに騎士ゴーレムは無残に砕かれて粉々にされていく。
「おいおい、嘘だろ。鋼鉄並みの装甲だぞ。それを素手で……」
イオの肉体は、バテルによって作り替えられた究極の肉体だ。骨は固く、筋肉はしなやか。魔力は使わずとも、ただ素手で殴る。それだけで、バテル自慢のゴーレムをいともたやすく破壊してしまう。
バテルの想定以上の力を発揮している。
「すごいです。この体。とっても軽いし、今まで見ていなかったこの世界のすべてが見えるみたい。戦う間にもどんどん力があふれて止まらない」
イオはこれまで味わったことのないような爽快感と満足感のただなかにあった。多かれ少なかれ人は、どんなに気分がいい状態でも常に眠気、疲労、空腹、倦怠感、様々な負の要素を抱えながら生きている。だが、イオの体にはそれがない。常に万全、最高の状態を維持している。
そしてその力の出力はイオの想像をはるかに超え、目の前の鋼鉄の塊をいともたやすく破壊してしまうほどである。
「くそ。本気で行くぞ。錬成! 錬成! 錬成!」
自分の想定の甘さに焦りを覚えたバテルは、さらに錬成を続ける。
瞬く間に百体の騎士ゴーレムが森に満ち、イオに襲い掛かる。
「くひひ、ムキになっておるのう。バテルよ」
木の上から見下ろすシンセンが笑う。
「たあ!」
イオが拳を振るうと騎士ゴーレムたちは、一気に薙ぎ払われて、土に戻されてしまう。
そんなことお構いなしにバテルは、また次のゴーレムを錬成していく。
(体中を魔力が駆け巡って、頭が焼けそうだ。だが、物量で攻めれば、イオでもいずれは……)
だが、イオの猛攻は止まらない。
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