第11話 禁忌に触れる覚悟
「では、残りの魔結晶を使って、マギアマキナを作りましょう」
バテルは、まだマギアマキナを増やすという。
「兄弟姉妹が増えるのが楽しみです」
リウィアもニコニコしている。
「まだ作る気か」
「核となる魔結晶があれば、いくらでも作れますから」
「作れるか作れないかという話ではない。リウィアは、人間と同じじゃ。魂がないという言い訳は通用せぬ。やたらめったら作ってよいものではない。禁忌に触れるということは、禁忌に触れられるということ。あまりにも危険じゃ」
バテルが、マッドサイエンティストになってしまうのではないかとバテルは危惧する。
「師匠、すみません。俺だってわかっているつもりです。でも、どうしても大量のマギアマキナが必要なんです。マギアマキナの力を借りないと……」
バテルの顔が、暗くなる。
「訳ありの用じゃな。わしに隠し立ては無用じゃぞ。いらぬ気を使うな」
「師匠……。はい、実は、妹のディアナと幼馴染のイオの体を
バテルは、マギアマキナを作ることになった経緯を語りだす。
「おぬし、妹や幼馴染にまで……」
「いいえ、師匠とは違って、研究のためじゃありません。妹のディアナは日光に弱く、イオは魔力が使えない。その原因を突き止めたかった」
バテルは、ディアナとイオの体を検査した時のことを思い出す。
ある晩、バテルは、ディアナの部屋を訪ねていた。
「解析」
ディアナの寝ているベッドに錬成陣を展開し、ごく微弱な魔力を流して体の構造や魔力回路を調べていく。
「よし、これで検査は完了だ」
「どうだった? 悪いところだらけだったよね」
「いや、特に悪いところはなかったな。魔力回路もいいものだ……」
怪訝そうな顔をしてバテルが言う。
多少の違和感があってもディアナの体にこれといった異常は見られない。むしろ健康体で魔力回路も優れている。
「ふふ、バテルお兄さま。嘘が下手」
ディアナは、バテルが自分に気を使っているのだと少し寂しそうに笑う。
「それとも、どこか悪いわけじゃない。お日様の下で歩けない体。それが私ってことなのかな」
「ディアナ……」
「ごめんなさい、バテルお兄さま。お兄さまは、私のためにいろいろしてくれているのに私、ひどいことを」
どうしようもない状況へのいら立ちをバテルにぶつけてしまったとディアナは後悔する。
「あはは、ディアナは少し賢すぎるな。考えすぎだよ。俺はなんとも思ってない」
「バテルお兄さま……」
「大丈夫、俺はディアナに嘘をついたりしないよ。きっとすぐに良くなる。なんとかしてみせる」
バテルは、ディアナの頭を優しくなでる。
「バテル様。またディアナ様の部屋に隠れていたのですか」
バテルを探し回っていたイオが入ってくる。
「お、イオじゃないか。ちょうどよかった。イオも身体検査しないか」
「身体検査……。ディアナ様に一体何を」
イオは手で自分の体を隠す。
「待て待て。何も服を脱がそうってわけじゃないぞ。
「バテル様、いつの間にそのようなことが……」
魔力回路を検査するなんて北部では高位の神官しかできないような高度な技術をいつの間にバテルが使えるようになったのかとイオは疑問に思う。
「な、頼むよ。一回やってくれたら言うこと聞くから」
バテルは、手を合わせて頼み込む。
「大丈夫だよ。イオ。何も痛くなかったよ。お兄さまに協力してあげて」
「……ディアナ様がそうおっしゃるなら」
「よし、そこに立っていてくれ、動くなよ」
バテルは、イオの足元に錬成陣を展開する。
「さ、解析開始だ」
錬成陣から糸のように細いごく微量の魔力が、イオの体の中を通っていく。
「こ、これは……」
何かに気付いたバテルは、急いで錬成陣を停止させる。
「検査は終了だ」
「え、もう終わりですか」
イオは、ぽかんとその場に立ち尽くしている。
「ああ、すまないが、用事を思い出したので、これで失礼」
「あ、バテル様、ちょっと待ってください。やっぱり魔力回路の検査なんて嘘。また逃げるつもりですね。ディアナ様失礼します」
ディアナの部屋から飛び出したバテルをイオは、慌てて追いかける。
ディアナは小さく手を振りながら、
「お兄さま、やっぱり嘘が下手」
とつぶやいていた。
シンセンとバテルの会話に戻る。
「それでイオという娘の体に一体何があった。なぜ途中で解析を止めた?」
シンセンが小首をかしげる。途中で解析を止めてしまっては何もわからないではないか。
「イオに魔力を通すのは危険なんです。イオは、まるで爆弾です。早く何とかしないと。そのためにはマギアマキナたちの力が要ります」
バテルはイオのことを詳しく話し始めた。
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