3

 *


 「うぅ、酔いそう…」

 「フウ、オレのひざの上に、」

 「と、ゆうことは、あの、あ、安全、安全運転、をっ」

 「はは、安全、安全、チョー安全。おにいさん、パトカー運転するんだぜ?」


 部品がひとつふたつかけてんじゃないかってご老体ビートルを、お巡りさんは巧みなハンドル捌きとブレーキングで走らせる。


 体感速度は二〇〇キロごえだ。


 きっと、速度違反か事故かでヤンにはあえない。


 しかも、


 「おじさん、なんなの? あの車!」

 逗葉新道に入ったところで、いかついハイエースがぴったりぼくらにくっついていた。


 「パスポート職人さんだな」

 「そんな職人あるの?」

 「大丈夫、おにいさんの友だちだ」

 「ぜんぜん大丈夫じゃないよ」

 「…フウ太、おにいさんのことなんだと思ってんの?」

 「悪い人だと思ってるよ」


 ビートルはそのまま第三京浜に合流して、ハイエースもついてくる。


 「まずいですまずいですまずいです!」

 身体ごとうしろを向いてハイエースを気にしていたシュウが叫ぶ。


 「あは、」

 お巡りさんもミラーごしに確認したのか楽しそうに肩を揺らした。


 ハイエースの助手席から男が身をのりだして、その手には、


 「銃だ! フウ! 伏せて!」

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