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*
「それでは!」
ユリちゃん…
浴衣姿のユリちゃんはヤル気…やる気満々で布団に鎮座している。
上気した頬が玉子みたいにすべすべで布団に正座してるユリちゃんは、まさに据膳とかゆうやつだ。
…しかも、ユリちゃんがニュースにはしゃいでるあいだにオレがせっかく離して敷いた布団をご丁寧にくっつけている。ユリちゃん、おじさんはユリちゃんの将来がめちゃくちゃ心配です。
「そろそろねるお時間ですよ!」
ねるって感じじゃないよね?
「あ!」
ゆっくり布団をこちらに引っ張ってはなすと、またふくれっつらになる。
ではねましょうおやすみ。
「くじらさん!」
ユリちゃん、
「むぅう…」
そんな顔しないでください。
「く、くじらさんは…っ」
お、
引きむすんだ口がふるふるふるえて、吊り上げていた眉が八の字に落ちてくる。耳まで真っ赤になる。
「くじら、さん、は、」
大きな目にみるみる涙があふれて頬を転がり、膝で結んだ拳に落ちてゆく。
あぁ…
「わたし、わたしっ、のこと、」
あぁ、ごめん。だけど…そんな顔もかわいいんだ。
子どもみたい、かわいらしい泣き顔を録画モードにした胸に留める。
「っひ、もうっ…、」
しゃくりをあげだすユリちゃんの頭を…オレにできる限り…優しくなでる。
ユリちゃん、オレはキミに頼まれて、この心を間違いなく、ユリちゃんに納品したはずだ。
この心はユリちゃんのものだよ。それとも、オレの仕事になにか不備でも?
「あ! そんな、そんな顔! は、反則です!」
ユリちゃんは顔をまた真っ赤にして、バフン! て、布団をかぶってしまった。
不貞腐れた芋虫みたいだかわいい。こんどこそ写メを撮ろうとして、
「知らない!」
バシッ
脚でスマートフォンを弾きとばされてしまった。
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