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 「『お泊まりドライブデート in 伊豆』で、女子高生のこころを盗む」


 オレには、盗めない。


 「え! おまえ、お泊まりデート、受けたじゃないか」

 朧月がチョコチップクッキーをつまみ上げる手をとめた。


 「木村に指定ナンバーまでつくらせといてそれはない」


 ユリちゃんがいきたいならオレはどこにでもいくし準備だって万全を尽くす。


 「それなら、」


 オレはユリちゃんのものだからな。


 朧月が肩をすくめて首を振る。

 そんな芝居じみた仕草も彼にはさまになる。毎週のように『彼女』を取っ替え引っ替えする彼には。


 「ユリちゃんが、かわいそうだ」


 そうゆうんじゃ、ない。


 オレのこころはユリちゃんのものだし、


 ユリちゃんがもういらないとゆうまで…いやそうゆうとしてもユリちゃんのためにできることを、きっと考えている。


 だけど、オレがユリちゃんのものになるのと、ユリちゃんがオレのものになるのはまったく違う。


 じぶんの心にまで手をだしたオレでも、決して、奪ってはいけないものがあるのを知っている。


 ユリちゃんはまだ若い。

 いまはオレに気持ちが向いていても、大人になれば、地に足のついた男を見つけるだろう?


 オレなんかに縛られていいはずがない。


 ユリちゃんのハートは、いまオレが盗んでいいものじゃない。


 朧月が小さく笑う。


 「そんなこと…おまえがゆうんだ?」

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