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 「こことか、どうですか?」


 て、ユリちゃんは遠慮なく海岸の前の方に陣取る。

 「わたし背が低いから、ぐいぐいいかないと損するんです」

 遠慮なんて損するだけだ。なるほどそれがユリちゃんの哲学であるらしい、納得する。


 花火があがるのは下田漁港沖で、白浜海岸は混んでいるとゆうほどじゃない。それでも若いカップルやビジターサーファー、近所のおじいちゃんおばあちゃんが各々好き勝手にレジャーシートを広げて、ついでにつまみやら酒やらも広げている。


 「くじらさんもお酒とかのんじゃうんですか? 大人ですね!」

 て、セブンイレブンで買い込んだドリンクやらつまみやらをユリちゃんも広げている。

 (ユリちゃんにとってお酒は大人の象徴であるようだが申し訳ないことにまだ未成年の朧月も呑むことは黙っておく。もっとも彼は弱くてビール一缶で眠ってしまうのだが)。


 「くじらさん、はい焼き鳥! はい、たこ焼き! はい、ビール!」


 ユリちゃんが絶え間なく口に放り込んでくるものに頷きながら、耳に隠したイヤホンに意識を、申し訳程度に傾ける(十分だろう、だっていまはデート中だしこれは仕事でもないのだから)


 ザザ ザザ


 やがてノイズか風の音かが耳に入る。


 オンショアの風に、目のまえの海も白い波を立てている。


 なるほどいい波だ…


 容赦なく流し込まれるビールな咽せながら、胸のうちで呟く。

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