13
「こことか、どうですか?」
て、ユリちゃんは遠慮なく海岸の前の方に陣取る。
「わたし背が低いから、ぐいぐいいかないと損するんです」
遠慮なんて損するだけだ。なるほどそれがユリちゃんの哲学であるらしい、納得する。
花火があがるのは下田漁港沖で、白浜海岸は混んでいるとゆうほどじゃない。それでも若いカップルやビジターサーファー、近所のおじいちゃんおばあちゃんが各々好き勝手にレジャーシートを広げて、ついでにつまみやら酒やらも広げている。
「くじらさんもお酒とかのんじゃうんですか? 大人ですね!」
て、セブンイレブンで買い込んだドリンクやらつまみやらをユリちゃんも広げている。
(ユリちゃんにとってお酒は大人の象徴であるようだが申し訳ないことにまだ未成年の朧月も呑むことは黙っておく。もっとも彼は弱くてビール一缶で眠ってしまうのだが)。
「くじらさん、はい焼き鳥! はい、たこ焼き! はい、ビール!」
ユリちゃんが絶え間なく口に放り込んでくるものに頷きながら、耳に隠したイヤホンに意識を、申し訳程度に傾ける(十分だろう、だっていまはデート中だしこれは仕事でもないのだから)
ザザ ザザ
やがてノイズか風の音かが耳に入る。
オンショアの風に、目のまえの海も白い波を立てている。
なるほどいい波だ…
容赦なく流し込まれるビールな咽せながら、胸のうちで呟く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます