12
*
日が暮れればまたべつのとっておきが待っている。
「花火! 花火!」
『これでユリちゃんのハートは確実だ!』
って、狼月リサーチの週末限定白浜海岸打ち上げ花火。
レンタルしたサーモンピンクの浴衣に、ユリちゃんの上機嫌はとまらない。
ユリちゃんを上機嫌にしているのは海であり花火でありかわいい浴衣であるのに、まるでじぶんがしあわせにしているのだと錯覚する。
「あら、あの子!」
しあわせとやらに呆けているとユリちゃんに腕を思いきり引っ張られる。ぐいぐい引かれる先には、
「あ、きのうのお姉さんと、お兄さん」
きのう、あの「爪木崎のガキ」がこちらにかけてくるところだった。
ユリちゃんとオレを認めてさわやかに歯を見せて笑う。
「きのうは、ありがとうございました」
礼儀正しくぺこり頭を下げる。できた少年だ。
「母がどこかにいっちゃって、さがしてるんですが、見ません…でしたよね」
「へぇ、いい子なんだ」
白浜神社へ浜をかけてゆく少年を見送り、ユリちゃんがぽつり呟いた。
「なんだかあんまり、かわいくないな」
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