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「あ! でもぉ、」
…て、拗ねたみたいなユリちゃんの顔が意外に近くにあってあわてて飛び退く。
「ちょっと疎いってゆうかぁ、鈍感でゆうかぁ、それはよくないかなぁ」
え?
「さっきからずっとアピールしてるのになぁ」
え?
いや、たしかに、さっきからユリちゃんが耳を触ってるのには気づいていた。
ただのクセかと思っていたんだけど?
見れば真っ赤だ。熱をもってるのかもしれない。耳、…痛いのか?
耳、痛いの…
「あ!」
…かっ⁉︎
「わかりました⁉︎」
え、
「ピアス!」
え、気づかなかった。いまいわれて気がついた。
改めて見ると、たしかにかわいらしいマーガレットが、耳たぶにちんまり収まっている。
「あ、ノンホールですけど。ピアス禁止なんで。定時の女子ってみんなピアスとかしてるし、どうかなぁ、て」
どう、とは?
「どう、ですか?」
え、正直、浮いている。
全日制の、地味な濃紺のブレザーに、あきらかに浮いている。けど、
「似合いますか?」
なんて、顔を真っ赤にして俯いてしまうから、
「えへ、よかった!」
え?
無意識に、頷いてしまった。
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