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 「パパ、警察官なんです」


 え?


 「想定外!」

 朧月が愉快そうに降参ポーズをとる。


 「万引きとかタバコとか、いつもここの定時生徒だって文句いってます」

 お巡りさんにバレるなんて、一年の素人だろうけど…まぁ、その通りだ。

 「パパも先生も、定時制のやつとは関わるな、て、うるさい、うざい、それって、偏見だと思う!」


 拗ねた顔で、そう、オレを見上げてくる。


 残念ながら、パパが正しい。


 朧月はニンゲンを殺すし、オレだって人のものを奪って生きている。


 「だから友だちにも親にもはなせなくて。定時のひとが好きとか…」


 なんと、オレたちの所業がユリちゃんの恋路を知らず邪魔して…


 「で、パパが、県下の大泥棒が定時にいるんだって! くじらさん、先週火曜日にセブンで傘、盗みましたよね? で、あのひとが噂の泥棒さんか! て、ピン、と、きました! すっごくスムーズに盗んでました!」


 …いたのか、…て、え、見てたの?


 「見てたの⁉︎」

 朧月が目を丸くしている。そうだろう、オレがものを盗る瞬間を、朧月だって見ることができない。それなのに、


 「さすが! て、感じ。手品みたい!」


 いや、女子高生に見られた時点でまったくさすがじゃない。雨でよほどぼんやりしていたのか? オレは…それとも、

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