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*
幻だったのかもしれないと思っていたユリちゃんは、きょう、登校すると宣言どおり、
「いるじゃん!」
朧月が指さす先、食堂の外テーブルにポツン、と、座っていた。
周囲の…おもに野郎らの視線を集めているが、愛の力か素なのか、まったく気にした様子はない。
オレたちの姿を認めると、パッ、と、顔を上げて、照れたように胸の辺りで小さく手を振ってくる。気持ちがむずむずする。
「くじらさん!」
くじら? え? オレのこと?
「ぶっは! くじら!」
放心するオレのとなりで「センス!」なんて朧月は無責任に笑い転げている。
「大きくて、のんびりしてるでしょ?」
…してますか?
「約束の品です!」
て、渡された弁当はずっしり重い。あれだ、野球部員が食べそうなゴツさ。不釣り合いにかわいいくじらキャラがプリントされたバンダナに包まれている。
「お料理教室通いはじめたんです!」
フン! て、ユリちゃんは胸を張っているけど…報酬だと提示された弁当は、じつは毒味だったらしい。
「あのさぁ、ユリちゃん、…ぷ、ひと…、ひとつ、訊いて…ぷふ、いい?」
くじらのバンダナがツボにハマったらしく、朧月の声が震えている。
「こいつが…泥棒、て、…はは、あ、ごめん、…だれに…聞いた?」
「え? パパです」
え、なんて?
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