3

 「…期限は?」

 「六月、二十日、土曜日、午後十二時、です!」

 「そこだけめちゃくちゃ具体的なんだ」

 「湯河原ホタル祭りがあって」

 て、こんどはもじもじしはじめる。

 「一緒に、ホタル見たいなぁ、なんて…浴衣で、…きゃあ! むり、もう無理です! やめてください!」


 なんだか、オレたちが女子高生をいじめてるみたいになってきてる…


 「あの、あの、あ! ダメだ恥ずかしい! あの、きょうはこれで失礼します!」


 え、恥ずかしい? いまさらでは?


 「それではあした! 食堂でお待ちしてます!」


 え、あしたも来んの?


 「え、お嬢ちゃん、」

 「さよなら!」

 校門へと、バタバタ、脱兎の如く走っていってしまった。


 「…ヤバいなあの子」


 セブンで傘を盗む男に一目惚れしモノにする計画を実行し、来週には恋仲に落ち着こうとしている。


 泥棒にハートを云々時点でヤバいけど、べつの意味でいろいろヤバそうだ。


 「お前が泥棒だって、どこで、」

 朧月が意見しかけたのを読んだように、


 「あ!」


 ユリちゃんが校門で足をとめてふり返った。


 「あと! その人、すっごく、優しいんですっ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る