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 「わたし、クラスの男子に告白されちゃったんです!」


 え、なんて?


 「つきあってください、て!」


 なにいっちゃってるんだそのクラスの男子は。ユリちゃんにはいまオレがいるだろうが。


 偵察(もちろんユリちゃんには内緒だ)したユリちゃんのクラス…一年七組の男子面々を巡らす。どいつもヒヨッ子、まだ身体だってできてない、そんな感じだった。


 「驚かないんですか?」


 いまこのタイミングには驚いたな。


 「嫉妬したり、しないんですか?」


 オレに引き留める権利なんてない。そうだろう? それに、


 「なぁんだ」

 想定外に、ユリちゃんはふくれっつらだ。それもかわいい。


 ユリちゃんの柔らかい腰を抱きよせる。揉み心地のいいぷよぷよの頬をつまむ。

 「あ! 余裕なんだ! そうなんでしょ! そうなんですね!」

 応えるように、手に力をこめる。


 それに、あんなヒヨッ子どもに、ユリちゃんの気持ちが動くとも思えない。


 「たしかにわたしのくじらさんは、クラスのだれよりステキですけど!」


 ご満悦な顔でユリちゃんがシャッターを押す。

 ユリちゃんのころころ変わる表情が愛おしい。


 気を抜けば、手をのばしてしまいそうだった。



 いや、じっさい手を伸ばそうとして、


 「っ、」


 臆病な殺意に左手が反応する。

 「くじらさん?」

 尻ポケットに手を構えて視線を走らせるけど、

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