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「やっぱりくじらさんはカッコいいですよね!」
ハンカチ…ではなくスカーフ? は、オレの身長でなんなく手が届いた。
手渡したスカーフを汚いものをつまむみたいに受けとる女性が気に食わなかったけど、ユリちゃんはオレの『人助け』にご満悦だ。まぁオレはユリちゃんがいいならそれでいい。
「お兄ちゃん、背ぇ高いねぇ!」
て、目をまんまるにするおじいさんとその奥さまにも、
「そうです! くじらみたいに大きいんです!」
て、満足げに頷いていた。こんな体格でよかったと思ったのはこれがはじめてだ。それなのに、
「あの子、かわいかったなぁ、」
え?
「さっきの、」
かわいい? あのちんちくりんがか?
気の弱そうなガキだった。小学五年くらいか。男のくせに泣きそうな顔して、
泣きそうな顔して、オレたちが駆けつけると、女性を突き落とそうと構えた手をあわてて引っこめた。
「なんか、もじもじしちゃって」
もじもじ…
「母性くすぐりますね!」
ボセイなにそれ!?
「わたしもあんなかわいい子がほしいなぁ! なんて、きゃ、いっちゃった! くじらさんは、女の子が、…くじらさん、くじらさん?」
え、あんなガキがいいのかボセイってなんだいやそもそもかわいいのがいいのかユリちゃn
「あ! くじらさん、ヤキモチですか⁉︎ そうですか⁉︎ そうなんですね!」
い、いや、ちが、
「きゃぁ! うれしい! くじらさん、男の子だとたいへんかなぁ〜」
え? なんのはなし?
「赤ちゃんの性別は選べないしなぁ〜」
え、あ、なんのはなし? あ、まってユリちゃん!
踊るように小径を戻ってゆくユリちゃんをあわてて追いかける。
楽しそうにポニーテールを揺らして笑う。
「やっぱり子どもはふたり、ほしいですよね!」
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