10

 *


 「きゃぁ! 海、すっごくキレイ!」


 翌日は伊豆の醍醐味海デートだ。

 駐車場と海岸がつながるこぢんまりとした下田多々戸浜。両岸を山で囲まれた小さい浜だけれど海の青さは世界トップクラス。

 しかもいまは、ユリちゃんがとなりにいる。多々戸ブルーがいつもより五割増しに眩しく感じる。


 秋晴れ快晴の青空のした、青とも蒼とも違う、ラムネ瓶みたいに透ける海が広がる。


 関東近郊から多くのサーファーが温暖な気候、エピックな波、白い砂浜、それからこの一点のシミもないブルーを求めて、多々戸浜へ集まってくる。


 朝の陽を透かしてひかりの輪が揺蕩う海に、ユリちゃんもご機嫌だ。


 台風に反応したうねりがオフショアの風に整えられてきれいにほれる。


 きょうの波はいい、最高だ。


 「おねぇちゃんは入らないの?」

 「はい、わたしはかっこいい彼の勇姿を激写するんです!」

 「へぇ、おにぃちゃん! かわいい彼女じゃない!」

 「やっだ! 彼女なんて! 彼女ですけど!」

 「ゔっ」

 照れておじさんサーファーに腹パン喰らわしているユリちゃんにもテンションがあがる。


 「ひゃあ! なんですかこれ!」

 SEX WAXにはしゃぎ、


 「わぁ! くじらさんステキ! なんとか選手みたいです!」

 オレのウェットスーツ姿にはしゃぎ、


 「わたしが、めっちゃかっこいいくじらさんをばっちりとりますよ…あれ? これどうなってるんですか?」

 はじめて触るGoProにあわて、

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る