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 「え?」


 たっぷり五行かけてユリちゃんが目を、ゆっくり見開く。


 もとから丸いから瞳が落ちちゃうんじゃないかと心配になる。


 「え? え?」


 やっと落ち着いたのかと思っていた目からまたみるみる涙が溢れてくる。


 あれ? オレ間違えたか?


 「いや、すまな、」

 「くじらさん!」

 「はい、」

 「よ、よ、」

 「よ?」




 「よろこんで!」




 「っうぉ!」

 飛びつかれて砂浜に尻餅をつく。

 ユリちゃんの愛は重たすぎて不意打ちでは受けとめきれない、情けないけど仕方がない。


 「ありゃぁ、こりゃあれか、プロポーズの演出っつやつだら」

 「あらまぁ、忘れられないプロポーズね」


 演出じゃなくてリアルだが、それはともかく釣竿の夫婦がプロポーズ成功を祝福してくれる。


 「なになに、」

 「サプライズ?」

 「なんだ」

 「プロポーズ?」

 「え? 女の子、未成年じゃない?」


 伊豆の花火も、見物客も、それから、


 「よぉ、ぶじ、海に落としてやったぜ」

 「やった! おじさん、ぼくやりました!」


 朧月と兄貴の弾む声が、イヤホンから届く。


 「オレも…不本意ながら依頼を完遂した」

 「はは!」


 イヤホンの向こうで朧月が手を叩く。「だからいったんだ!」


 「おまえはユリちゃんに、敵わないよ」

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