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「盗めそうか?」
一気に食べてしまうのがもったいなくて箸をおく。
朧月の問いに、俯く。
「盗んでいいかなぁ、て?」
そう、きっと、盗んではいけない。
傘を平気で盗むやつなんて、ユリちゃんをしあわせにできるとは思えない。
けれど、
朧月と食堂をでる。
これは仕事だ。盗品について依頼主がどうするか、口をだす権限はない。
「お! きょうも来てたじゃん、あの女!」
いや、いっそ、
「ヤったんだろ? どう? 紹介してよ、あんな顔してけっこうヤリ●ん…」
ふりむきざまに思い切り拳をふりかぶる。
が、
「ダメです! くじらさん!」
背後の茂みからなにかがとびだしてオレの腰にしがみついた。
体制を崩してたたらを踏む。
その隙をついて相手が拳をふり、それが顎に入る。
視界の端で朧月が右手を引くのが見える。
が、それよりはやく、
「ぎゃあ! いて、いてぇ!」
相手が、顔を覆ってその場に蹲った。
なんだ⁉︎
「あっちいけ! あっちいけ! あっちいけ! バカぁ!」
「ちょ、ユリちゃん!」
ユリちゃん⁉︎
あわててふり向くと、ユリちゃんが、砂やら砂利やら…いかにも殺傷力ありますみたいな石まで、を、豆まきのごとく相手に投げつけていた。
「ユリちゃん、ユリちゃん! まずい、センセーきちまう!」
朧月がむりやり押さえつけるまでその奇襲はつづき、相手はうつ伏せのまま、動かなくなっていた。
うそだろう?
女子、こわ…
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