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下田市に入りちょっと遅いランチは、下田漁港に併設された金目亭。朝、水揚げされた金目鯛を堪能できるらしい。が、
『はじめてなら姿煮』て、漁師さんがすすめてくれたのに「目がむりです!」て、ユリちゃんはなんと金目鯛の天丼だ。それじゃなんの魚かわからない。
「わかります! このふわふわな白身はまさに金目鯛です!」
ホカホカごはんの上に、サクサク衣の揚げたて天ぷら。
サクリと割れて、なかからふかふかの白身が顔をだす。
メインのキンメも、エビもカボチャもサツマイモも大きくてユリちゃんはご満悦だ。
それなのに、
「目が! 目が見てますよ!」
て、オレの金目鯛姿煮には、必死に目を手で覆っている。
と、思いきやこわいもの見たさか、指の隙間からチラチラ見てる。かわいすぎる。
目玉だけ取りだしてからかうとまた、きゃぁ! て、あわてて目を塞ぐ。かわいすぎる。
姿煮は大きな金目鯛丸ごと一匹。頭と尾が皿からはみでている。肉厚でふわふわ、身が柔らかい。臭みもない。お袋な味(お袋の味はもう覚えてないけど)の出汁が染みる。
天ぷらと煮付けを半分こして、ユリちゃんが食べきれないご飯はオレがいただく。〇.五と一.五人分で、オレたちはすごくちょうどよくできている。
こうゆう瞬間もすごくいい。
見てみろ、オレは世界一のしあわせ者なんだ、て、じぶんのろくでない人生まで自慢したくなる。
「South cafeのアップルタルト、いきましょう!」
え、まだ食べるんだ?
「デザートは、食べないと身体に悪いんですよ!」
て、ユリちゃんはそんなことも知らないのか! みたいに目をまんまるにして見せる。どうしたってかわいいけどそのからだのどこに入るんだろうとか考えずにいられなかった。
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