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 それに、オレもそれどころじゃない。


 「きゃ!」

 ユリちゃんを抱き込んで伏せる。並べていたつまみやビールが盛大に散らかる。乾いた破裂音が空気を震わす。


 背中に熱が走る。

 そのまま砂を蹴る。


 ジャンキーな殺意。

 その方向に光るものを認めて、


 届かないか、


 チカチカ、目の奥がまたたく。

 いつかの光景がフラッシュする。


 オレを呼ぶ女性の声。

 蛍光灯に光る包丁。

 耳に残る断末魔。

 ぬるぬるとした血の感触。

 冷えてゆく気持ち。


 やっぱりだ。

 やっぱりオレはユリちゃんを、

 しあわせにはできないんだ、

 こんなオレに、


 「きゃぁあ!」

 「なになに!」


 っ!


 見物客がそれに気づいて騒ぎはじめる。


 「なんだおみゃあそれ、」


 危ないっ


 近くにいた漁師らしきおじいちゃんが飛びだそうとして、


 「ぎゃぁぁぁあっ!」

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