第17話

個人の戦闘能力がいかに高くても、集団での戦闘能力が低ければ、

戦闘に勝つことはできない。いやむしろ、戦闘能力の高い一人の人間が

集団の戦闘能力を下げている。

戦闘力とは、集まるほど強くなり、散らばるほど弱くなる。

つまり、兵士ごとの強さに差がないほうが、集団としての戦闘力は高くなる。

エースで四番の選手におんぶに抱っこのチームに、一人一人は凡人だが統率のとれたまとまったチームが大差をつけて勝つのはこう言ったことが理由だ。

小林のいる部隊はまさに前者であった。

この部隊は元々、稲川におんぶに抱っこの部隊であった。

「若い頃は、一人でも多くの敵を殺すことを考えていた。そうすることでこの部隊の戦闘力の低さをカバーできると思っていたからな。でも実際には違った。」

仲間はどんどん死んでいき、いつしか稲川は死神と呼ばれるようになった。

いつしかこの部隊には、行き場のなくなったものか、よっぽどの物好きしか来なくなった。

ある戦闘で、稲川は一切戦闘に参加しなかった時があった。

その前に戦闘で右目を負傷し、指揮をすることしかできない状態だった。

だが、その戦闘では死者が一人もでなかった。

稲川は落胆した。

この部隊を弱くしていたのは自分自身だったことに気づいたからだ。

仲間を信頼し、自ら考えさせればよかったのだ。

それ以降は、稲川は自ら先頭に立つことは少なくなった。

小林が生前いた部隊はまた違った問題を抱えていた。

司令部の拙い戦術と他人任せの戦略で、多くの兵士が無駄死にしていった。

彼らは、指示されたことを完璧に遂行した結果死んだのだ。

今この部隊が抱えている問題は、3つある。

1つは、小林クラスの戦闘能力を持ち合わせた人間が今のところ稲川しかいないことだ。それをなんとかしようと朝倉を、小林と一緒に組ませている。

2つ目は、集団行動の質だ。まだこの部隊は1年目のひよっこばかりで、集団行動の質が悪い。群れから逸れた雛鳥が、鷹に襲われるというようなことが度々起こっている。

3つ目は、部隊の問題ではない。国の問題だ・・・。

今現在、この国は政治的問題を抱えている。

1年目のひよっこだらけの部隊が作られたのもそれが原因だ。

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