第10話

俺にコテンパンにしごかれた後、

兵士たちは教室に集められた。

兵士たちはどこか浮かない顔であった。

それもそうだ、己の弱さを叩きつけられるというのは

誰しも苦しいし情けない気持ちになるものだ。

教室の扉が開く。

入ってきたのは、稲川だ。

「随分とやられたようだな。」

稲川はどこか嬉しそうに言った。

「君たちも痛感しただろう、自分がいかに何も考えずに戦ってきたのかを・・・。」

兵士たちは何も言えずに、多大な側の言葉を飲み込むしかなかった。

「今から俺が教えるのは、戦闘における術理とルールだ。稲川君も言っていただろう、戦闘には理合いが存在すると。」

「見てたんですか。」

「もちろん。君がどう教えるのか興味があってね。君は私が教えることも考慮して訓練していただろう?。」

そこまで気づいていたのか。

稲川の洞察力に凄みと少し恐ろしさを感じた。


「小林君と戦った時に、囲うように指示を出した人がいたね。」

「はい。」

「川田君だったね。なぜそのように指示を出したのかね?」

「その方が相手を仕留められると思ったからです。」

「なぜそうしたかったのかね?」

「自分だったら、視界の外に敵がいるだけで、責めるのを躊躇するからです。」

「そうか、小林君。こういっているがどうだ?」

「相手を囲むというのは、基本の一つですから間違ってはいません。

惜しかったのは、彼が敵から視線を外してしまったことです。

ほんの数センチだと思うんですが、それで敵が視界から消えてしまった。

緊張状態における視野と、通常の視野は異なるということを知っておくべきでしたね。」

「ありがとう。相手を囲むのは基本と言ったがなぜかね?」

「それは、攻撃が決まる時というのは・・・。」

と言いかけたところで、稲川は俺の言葉を静止した。

「小林君すまないね、その攻撃が決まる時というのが今日のテーマなんだ。」

そう言い、稲川は黒板に何かを書き始めた。

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