軍神戦記

男気

第1話

大地は薬莢で覆い尽くされていた。

血と硝煙の混ざった匂いは、人としての感覚を狂わせ、男はただ無心で敵兵を撃ち殺し続けた。

先の大戦で死ねなかった男は、死に場所を探していた。

家族は、空襲と爆弾で全員死んだ。

それから男は、憎しみを抱えて生き続けて来た

ただ一人でも多くの敵兵を撃ち殺す事を目的に生きて来た、

ただ祖国に居続ければそれは出来ないこともわかっていた。

男は、国籍を変え、名前を変え、顔すらも変えた。

30年前の話だ。

そして、今、男は撤退する敵兵をを追っている。

一人でも多く殺す為に。


ここまでやっておいて撤退だと?

ふざけるな。

5体満足で、祖国の血を踏めると思うな。

手榴弾2発とライフル銃、弾発20発持って、

男は、敵兵を追った。

敵を殺しにというよりも、敵に殺されに行くように。


男が投げた手榴弾は、敵兵の手前15メートルに

着弾した。

爆発音に気づいた敵兵が、振り返ると、

20発の弾丸が敵兵を襲った。

運悪く撃ち抜かれた敵兵を見て男は笑った。

死神か悪魔に見えたのか、発狂しながら

米兵たちは男に向かって銃を乱射した。

銃弾は男の頭を打ち抜き、男は前のめりに倒れた。男は死ぬその瞬間すら笑っていた。


こうして、男の54年の人生が終わった。

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