第19話

スカイロスは、龍刀とは真逆の地形で、周りを陸地に囲まれており、

領地の大きさでいうと、龍刀とさほど変わらない。

ただ一つ違ったのは、スカイロスは世界最先端の技術を有していたことだ。

スカイロスが有していた技術、その最たるものは

「魔力のエネルギー変換」である。

ストーンピットブルなどの魔物は体内に魔力を貯蔵しておく器官を持っている。

その中から魔力を抽出して、軍艦、戦闘機、戦車の動力源とする技術をスカイロスは世界ではじめて開発した。

通常の燃料では、満タンにしても海峡を一つ越えるだけで使い切るところが、

魔力燃料の場合は、半分どころかほとんど満タンのままだ。

しかも、軽量のため、戦闘機は燃料の重さを計算しなくても良い。

燃料が足りなくなり帰還できずに死ぬというリスクがこの魔力燃料のおかげでほぼ無くなったと言っても良い。

スカイロスは典型的な軍国主義国家であった。

持たざる国は、相手との交渉材料に使えるものは金か人つまり奴隷だけだった。

大国に全てをむしり取られ一生隷属する。抵抗すれば圧倒的は軍事力で叩き潰される。そんな国をスカイロスはずっと見てきた。

ならば、交渉などしても無駄だ。

軍事力を持って奪う側になる。

それが、持たざる国が大国に抵抗できる唯一の手段だ。

そして全国民がその考えで一枚岩であれば、大国相手でも勝ちうるかもしれない。

そしてスカイロスは周辺諸国を支配していった。

最初に侵攻したのはスカイロスの東側に位置するイーデンだ。

このイーデンはアラゴとゲラーキの同盟国でもあった。

これを受けイーデンはアラゴは、スカイロスに宣戦布告した。

アラゴは、スカイロスの西側の国境を越えたすぐ隣に位置する国だ。

スカイロスはすぐさま、アラゴに侵攻した。

だが不思議なことに、戦闘はほとんど起こらず、ほぼ無血開城であった。

結果その後の戦争は、実質スカイロスとイーデンの戦いであった。

アラゴがあっけなく倒されたのにも理由がある。

相手の弱点に対して戦力を集中し一気に叩く。これが戦術の鉄則であり、

スカイロスはそれを実現する力を、魔力燃料の開発によってすでに持っていた。

アラゴもその当時は世界屈指の軍事力を持っていた。

ただ、その接頭辞には一世代前のという言葉がつく。

それに加え、アラゴでは反戦意識が強く、戦意も軍備も縮小していた。

スカイロスの世界最先端の技術と、戦術と戦意になす術もなくアラゴは敗北を喫した。

イーデンは、スカイロスと海を挟んだところに位置するため、

侵攻を受けずにいたが、もし陸続きに位置していた場合、アラゴと同じ運命を辿っていたかもしれない。

そしてこのスカイロスの快進撃が、リオンタリへの物資支援ルートが潰すこととなる。それは龍刀にとっては思ってもいない幸運であった。

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