第27話

文明が発展していくにつれ、

人間が持つ本来の感覚というものはだんだんと鈍くなっていった。

日本人は、自然の機微を感じ取りそれを歌に乗せるほどの感性を持っていたが、

文明や技術の革新によって、その感性も次第に薄れていった。

昔の人間が、自然の微かな変化に敏感であったのは、

それに気づかなければ死ぬからだ。

ちょっとした気の緩みが死に直結する環境下で生きていたからこそ、

鋭い感覚を持っていた。

だがその感覚は無くなったわけではない、奥深くで眠っているだけだ。

小林と朝倉は、その眠った感覚を再び呼び越している。


「朝倉、今の気温は何度だ?」

「12度です。」

「正解だ。」

「小林、上に飛んでいる鳥の数は?」

「鳥なんて飛んでいませんよ。」

「ふっ、正解だ。」

小林と朝倉は、特訓のおかげで常人よりはるかに鋭い感覚を手に入れた。

僅かな気温の変化、周りにいるの生物の呼吸を感じ取るレベルに達していた。

「半年でここまで行けるとはな。もともと土台はあったからかな?」

人は臨死体験をした後、今まで見えなかったものが見えたり感じたりすることができるようになることがある。

黄泉の国に近づいたついでに、何かしらのエネルギーを持って帰ってくるのかもしれない。小林は前世で何度も死にかけていたし、朝倉はついこの前ストーンピットブルに殺されかけた。何かしらの力が目覚めたのかもしれない。

「沖田が見せたあの力はな、ある条件を満たしたものが持つ力なんだ。」

「ある条件とは?」

「魔物に殺したことがあることだ。」

斎藤がそう言った後、小林は朝倉を見た。

「俺?いや俺以外にも何人かいますよ。」

「いや、あの場でストーンピットブルの群れを殺したのは俺と、お前とあと稲川さんだけだ。」

「あー、稲川は使えるぞこの力。」

「えー!?」

「あいつも一応新選組の出身だからな。」

「そうだったんですか?」

「沖田が使っていた力は実は二つある。」

「二つ?」

「ああ、一つは魔力を認知し、魔力を込める力だ。この力はさっき言った魔物を殺すことで手に入れることができる。ちなみに稲川はこの力しか使えない。」

「もう一つは?」

「もう一つは神力と言って、神羅万象を感じ取り、その力を物体に宿す力だ。」

「その力はどうやって手に入れられるんですか?」

「実際に神に逢うことだ。」

小林はなるほどと思ったと同時に、朝倉はこの力は使えないのではと思った。

「朝倉、お前も会ったことあるだろう?」

「え?」

小林が朝倉を見る。

「ばれましたか。」

朝倉は、申し訳なさそうに笑った。

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