第41話
「小林はこの国についてどう思う?」
「なんですか急に?」
「いいから。」
「そうですね・・・」
小林はこの問いの返答に困った。
正直国について考えたことないのだ。
当然である、急に異世界に連れてこられ、ほとんど化け物や敵国の兵士としか戦っていないのだから。
そう、小林は人生のほとんどを戦うことに費やしてきた。
戦っていれば、何も考えなくていい、むしろ変なことを考えないように
戦い続けていたのかもしれない。
「まあ、この国の姿を見たこともないやつ聞くことも国だがな。かくいう俺も一度も見たことないが・・・。」
「え、河上さんもそうなんですか?」
「ああ、お前と同じ、気づいたら、刀振り回してたよ。」
「それでここまで生きてこれたのもすごいですけどね。」
「まあここは明治と違って馬鹿な上の人間に殺されることもないしな。」
ははは、と河上は笑った。
「笑えないですよ、俺も似たもんですし・・・。」
「俺はな、この国のもんでもない人間に好き勝手にやられるのが嫌なんじゃ。」
「だから、処刑されることを知っていながら攘夷を貫いた・・・。」
「そうじゃ、だが奴らと来たら討幕した途端外国にかぶれよって・・・。」
「なんのために戦ってきたのかわかりませんね。」
「その通りじゃ、尊王思想も大義名分を手に入れるために取ってつけたようなものだ。新撰組には同情するよ。あんな奴らにいいようにやられて。」
「意外ですね、俺は河上さんは新撰組のこと嫌いだと思ってましたよ。」
「立場は違えど、奴らとは信念は同じだよ。まあそれに気がつけたのはここに来てからだがな。」
「そうですか・・・。」
*****
「俺はな、ここを異世界だとは思っとらん。」
「え、それってどういう意味ですか?」
「俺はな、ここは神様が与えてくれたチャンスの場やと思っている。
不思議に思わんか?」
「何がですか?」
「あまりにも似過ぎじゃろう、敵国の兵士の顔が、あの国の奴らに・・・。」
「確かに、思わず暴走してしまうほどに似てました。」
「はっはは、わしも初めて見た時はお前と同じことをしたよ。」
魔獣がいたり、魔法があったり、神通力があったりと、
違う部分はあるが、国のつながりや人種に関しては、
まるで、あの時の対戦をなぞっているかのように酷似している。
「似ているとしたら、また今度も・・・。」
「そうならないように俺らが呼ばれたんだろう。敗北を知っている人間が・・・。」
「敗北ですか・・・確かに一番知っているかもしれないですね。」
「それと、狂気にを持ったものもな・・・。」
「狂気?まあ何人か思い浮かびますが、近藤さんもですか?」
「お前何もわかっとらんの、あいつが一番狂っとるぞ。」
「え?」
軍神戦記 男気 @otokogi_41
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