第30話
近藤は、軍用ジープに小林と朝倉を乗せ、
自身が所属している隊舎に向かっている。
舗装されていない道で、巨大な車体が上下に大きく揺れる。
だがそんなこともお構いなしに、近藤はアクセルを踏み抜いている。
「近藤さん、俺たち今どこに向かっているんですか?」
朝倉が近藤に聞くが、車体の揺れと
荒れた道を通っているためガタガタと大きな音を立てているため、
近藤の耳に届いていていない。
朝倉はもう一度大きな声で言い直す。
「近藤さん!今どこに向かっているんですか?!」
「うるさいよ、聞こえているよ。慌てんでももう着く。」
そう言うと、巨大な岩壁が眼前に現れた。
「着いたって・・・。」
「上だよ。」
近藤は岩壁の頂上を指差した。
すると、小さく建物らしきものが見えた。
「それじゃ、荷物持って行くぞ。」
「行くって、まさかこれを登る?」
「簡単だろう?じゃあ俺は飛んで行くから。お前らは階段を使って来てくれ。」
「階段?」
岩壁をよく見ると、壁に沿って階段が貼りつけたかのように建てられていた。
ドンと音がしたと思ったら、近藤が岩壁の頂上の建物に向かって
跳んでいや飛んで行った。
「近藤さん、これと同じもん背負ってたよな?」
小林が朝倉に聞く。
「ですよね・・・、小林さん同じことできます?」
「できるわけ・・・、いや。」
小林は深呼吸し始めた。
「何やっているんですか?まさか、できるんですか?」
「朝倉、俺たち今まで何を習ってきたんだ?」
小林の靴が赤黒く光り始めた。
「あーなるほど。そう言うことっすね。」
朝倉も小林と同じように深呼吸し始めた。
「じゃあ、行くか。」
「はい。」
ドンと言う音と共に、二人は頂上に向かって飛んで行った。
近藤が、タバコに火をつけかけた時、
「ここ禁煙ですよ。」
「禁煙?いやここは・・・。」
近藤が、ばっと振り返ると
朝倉と近藤が立っていた。
「お前らどうやって?」
二人は、靴を指差した。
「なるほどな。斎藤が即戦力をよこすと言ってたからどんなもんかと思っていたが・・・、期待できそうだな。」
「あー気持ち悪い。呑み過ぎた。」
建物の中から一人の痩せた男が出てきた。
「んー?近藤誰だそいつら?」
「新しいここの隊士ですよ。」
「あー?新人なんてここじゃ使えねえよ!」
「あんたが、人手が足りないって言ってたから連れてきたんでしょうが!」
「上司に向かって、あんたってなんだ!」
「上司も何も芹沢さんと俺は立場的には同じでしょうが!」
「芹沢!?」
朝倉が、思わず声を上げる。
「あー?なんだお前、俺のこと知ってんのか?」
「知っているというか、なんというか。」
「ええ、あなたの前世については少し知っています。」
「小林さん?」
芹沢が鋭い眼光を小林に飛ばす。
小林はその目から目を逸らさず、じっと見つめ返した。
「ほう・・・。」
芹沢はニヤリと笑った。
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