第31話

そもそも新選組の前身である浪士組とはどのような組織であったのか?

犯罪者だろうが農民だろうが、腕に覚えのあるものは誰でも受け付けている点で、怪しい組織であることは悠に予想できる。

一説によると、江戸幕府に潜伏する過激な尊皇攘夷志士たちを炙り出すさくだあっという話もある。

芹沢と近藤はこの浪士組の3番隊にいた。

近藤は農民の出に対し、芹沢は出自は不明だが、近藤よりかは上だと

醸し出す雰囲気からか周りの人間はそう思っていた。


近藤「昔から、ハッタリはうまかったよなお前は。」

芹沢「そのハッタリに引っかかった奴が何言ってんだ。」

小林「芹沢さんについて知っていることは正直あまりないです。」

芹沢「そりゃそうだろ、家と国捨てて出てきた上に、幕府にとっても攘夷志士たちにとっても知られたくない汚点なんだからよ。」

小林「攘夷志士たちにとっても?」

芹沢「ああ・・・。」

***

「燃やせ、もっと燃やせー。」

芹沢は燃え盛る大和屋を腕を組んで眺めながら叫んだ。

歴史的に有名な『大和屋放火事件』である。

この事件によって辛酸を舐めさせられた者たちがいる。

この「大和屋」はとある組織のスポンサーであったのだ。

その組織は、あろうことか天皇を拉致し、傀儡国家を狙おうとしていた。

いわゆるクーデターを起こそうとしてたのだ。

だが、芹沢のこの大和屋放火でそれは頓挫した。

後に、その組織の手練手管によって、近藤は首を切られてしまうことになるがそれはまた別の話。


「おのれ、芹沢ー。」

有栖川が激昂しながら、扇子を握りしめていた。

扇子ははギリギリと音が鳴るだけで、壊れる気配は一切ない。

「すみません。」

「なんじゃ!・・・誰だお前は?」

「お初にお目にかかります、芹沢です。」

いつもの派手な格好とは打って変わって目立たぬように、

前身黒の着物を纏った芹沢が入ってきた。

その名を聞き、有栖川は思わすその部屋を逃げ出そうとした。

が出口は芹沢側にしかないことに気づきその場を右往左往と情けない姿を晒す。

「落ち着いてください、私は味方です。」

「味方?」

「今回の大和屋の件は会津からの命でやった事です。ここで断れば我々が疑われます。長州にはすでに我々の計画が漏れていることは伝えております。」

「そうか、それで中止に・・・。」

この有栖川との接触によって、会津は芹沢が敵だと言うことを確信する。


***

「近藤・・・、お前。」

近藤の羽織には徳川の家紋が小さく施されていた。

もちろん偽物である。

しかし、近藤が何者かを知らせるには十分すぎる情報であった。

「・・・そういうことか、まんまとお前らの掌の上で踊らされてたってわけか。」

「俺も似たようなもんさ。」

そう言い近藤は芹沢の首を切り落とした。



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