第24話

四畳半の部屋には、椅子が置かれているだけであった。

教室にあるような、硬い木の椅子だ。

その椅子にミネルヴァが、足を組んで座っている。A4サイズのファイルをめくりながら、

ニヤニヤと笑っている。

「ミネルヴァ、やはりここにいたか。」

「なんだ、タケミカヅチか。」

「また、自分が送り込んだやつを見てるのか。」

「貴様は気にならんのかい?」

「多少は気になるが、お前みたいに毎日こんな場所で、ニヤニヤファイルを眺めることはしないさ。」

「面白いぞ、貴様の国の奴らは」

「それなんだが、なぜお前は日本人しかも、言っちゃ悪いが負けた側の奴らばかり選ぶんだ。」

「負けたか・・・。お前には彼らが負けたように見えるのか。」

「そうだろう・・・。」

ミネルヴァは、ファイルを閉じ棚に戻すと、窓の外に広がる海原を遠くを見るような目で見ながら、タバコに火をつける。

フーと煙を吐くと、

「奴らは負けちゃおらんよ。」と笑って言った。

タケミカヅチは、眉をひそめた。

何を言っているのだこいつは、

ボロボロにされ、理不尽に処刑されていったのに負けていないとは、

どう言うことだ?

「意志の炎さえ消させなければ、その炎は違うところに広がりより大きな炎になっていく。」

ミネルヴァは、タバコを燻らせながらまた笑う。

「じゃあ、その炎はどこに広がったんだ。」

「奇妙なことだが、あいつが死んだ場所さ。まあそれについてはお前が勝手に調べろ。」

ミネルヴァはタバコを握りつぶし火を消し、部屋から出ていく。

「ミネルヴァ、お前はその意志の炎ってやつに賭けたってことか?」

「それだけじゃないさ。ただ単純にあいつらは強い。」

***

戦艦が綺麗に縦に割れ、そのまま時間が止まったかのように静止している。

その戦艦が巨大すぎるが故もあるが、まるで豆腐を切ったかのように

断面が綺麗に切られている。

運悪く戦艦と共に真っ二つに両断された乗組員が居た。

最初は何が起きているのかがわからなかった。

攻撃を受けているのは確かだがその方法の検討が全くつかなかった。

戦艦の乗組員もまさか戦艦ごと斬られてるとは思いもよらない。

爆発音と共にゆっくりと戦艦が縦に割れながら沈んでいく。

戦艦より少し離れた場所に、ボートに乗った男がいる。

男は、白く光るの刀を右肩に掛け、沈みゆく戦艦を眺めている。

戦艦から海に飛び降りた、乗組員の一人がその男に気づく。

直感で分かった、こいつが戦艦を両断した張本人だ。

「一体何者だ!」と乗組員の一人が叫んだ。

男は切先を天に掲げ、声高々に叫んだ。

「新撰組三番隊組長、小林清志郎だ。」


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