第25話

近藤と小林が、向かい合わせに座っている。

近藤はお猪口に日本酒を注ぎ、それを小林に渡す。

「まだ未成年なんで・・・。」と小林が言うと、

「酒の味は知っているだろう。それとも前世では下戸だったか?」

「下戸ではありませんでしたが、あまりいい酒は飲めなかったですね。」

「そうか・・・、いつからこの世界にいる?」

「2年になります。近藤さんは?」

「40年だ。」

近藤は、部屋の片隅にかけられてあるカレンダーを見ると、ふっと笑い

「ちょうど明日が俺の命日だ。」

近藤勇は、謀反の罪を着せられ処刑されて、死んだのも若かったと小林は記憶を辿りながら思い出していた。

もうお互い、転生してこの世界に来たと言うことは分かっている。

「小林君に一つ聞きたいのだが。」

「なんでしょうか?」

「新撰組について、一体どのように教えられてたんだ?」

「そうですね・・・。」

小林は、学校で教えられたことそして、近藤が亡くなってからのちに本なので語られた逸話について話した。

***

「そうか、永倉が俺たちについて後世に伝えてくれていたのか・・・。

ところで、その局中法度というのはなんなんだ?」

「え?かなり有名な話ですよ、士道不覚悟で切腹は・・・。」

「そんなものはなかったぞ。というよりそんなもの作ったら、人なんて集まらんだろう?」

「確かに・・・、ではこれは作り話・・・?」

「だろうな、斎藤にも聞いたんだが、結構嘘というか間違った認識で俺たちについては広まっているみたいだな。」

「そうなんですか?」

「そもそも尊王という考えでは攘夷派とは同じだ。大政奉還についても内部では賛成派が多かったしな。」

「むしろ真逆で教えられていました。」

近藤は、ふっと笑った後、

「歴史なんてのはそんなものさ。勝った方が都合よくいくらでも作り変えれる。お前もそうだっただろう。」

小林はしばらく黙った後。

「確かにその通りですね。あの裁判はただの茶番でした。」

小林は酒の水面に映った己の顔を睨みつけている。

「茶番か・・・、そうだな。」

近藤は、それを見ながら酒を啜る。

「あの斬首も茶番だったかもな。」

その言葉を聞き小林が、近藤の方を見る。

「小林、この戦争勝つぞ。負けたらどうなるか俺たちが一番分かってるからな。」

小林は残った酒を口に放り込み、

「必ず。」

と鋭い頑固で力強く、誓いを立てるように言った。




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