第8話
短期間で強くなる方法は2つある。
1つは武器を変えることだ。
俺はナイフを使うようになってから短期間で急激に強くなった。
自分の得意分野を見つけ磨くと言うのが、
強くなるための一番の近道だ。
武器を変えることで今まで気づけていなかった
自分の得意分野に気づくことがある。
2つ目は、考え方を変えることだ。
強者には強者たる思考法というものが存在する。
戦場において考えて行動している兵士はほとんどいないといってもいい。
驚くべきことだが、なぜそこを攻める必要があるのか、
命令の意図はなんなのかなんてほとんどの兵士は考えていないのだ。
もっと言えば、命令を出す軍部もそこまで考えていないのだ。
考えていないと言うより、見積もりが甘いといったほうがいいか。
生前いた我が軍の戦略は戦略ではなく願望に近いものであった。
それを変えるだけで、勝率は格段に上がるはずだ。
34人の兵士が整列していて、その前に稲川さんと俺が立っている。
「もうすでに知っていると思うが、昨日ストーンピットブルの襲撃を受け、
我々の大切な仲間を四人失った。再びピットブルの襲撃を受けた時に仲間を失わないために君たちには今一度強くなってもらう必要がある。」
34人の兵士は真剣な眼差しで稲川の言葉を聞く。
「昨日の襲撃では、一体のみであったが基本ストーンピットブルは群れで行動する。つまり再び遭遇するときはピットブルの群れと戦うこととなる。
このまま群れに遭遇した場合我々は確実に全滅する。」
「稲川軍曹、我々に足りものはなんでしょうか?」
兵士の一人が稲川に尋ねる。
「単純な技術と胆力だ。それを補うために我々がいる。」
「初めてのやつもいるだろうが、小林くんだ。」
俺は、直立の姿勢のまま表情を崩さずに34人の兵士を見る。
「射術と戦術理解は私が、ナイフ術は、小林くんが教える。」
稲川の言葉に、34人の兵士は動揺する。
それもそうだ、自分と同い年か年下の若造に教えてもらうなんて
俺が逆の立場ならふざけるなと言うよりなぜ?と思う。
「小林くんのナイフ術ははっきりって私より上だ。先ほど軽く手合わせしてもらったが、手心を加えてもらうぐらいの差があった。」
稲川の言葉に、兵士たちは半信半疑であった。
「小林さん、よろしくおねがいします。」
一人の兵士が言う、ストーンピットブルと戦い生き残った兵士だ。
「君は・・・、もう大丈夫なのか?」
「はい、もう大丈夫です。」
「そう言えば、名前を聞いてなかったな。」
「朝倉勇気です。」
「朝倉くん、よろしく。皆さんもよろしく。」
34人の兵士を見て言う。
兵士たちは黙ったままである。
「お前ら、死にたくないなら余計な事は考えないほうがいいぞ。」
稲川が兵士たちに向かって言う。
「よろしく!」
俺は声を張り上げて言うと、それに同調するかのように、
「よろしくお願いします!」
と34人の兵士の声が返ってきた。
そして、ストーンピットブルと戦うまでの、三日間の訓練が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます