第35話

人間は理解できない存在を敵とみなす。

正体不明の物体、未知のウイルスなど、

そして、その敵意は人間に対しても向けられる。

人道に反する行為をする者に対しては敵意ではなく殺意が向けられる。


朝倉は、心のどこかで思っていた。

敵がとんでもない極悪人か人殺しであれと。

そうであれば、もし殺すことになった時罪悪感というものは少ないだろうと・・・。

敵は、森の中で休憩中であった。

無警戒に火を焚いていたのが幸運であった。

そのおかげですぐに敵の存在に気がつけた。

一体どんな奴らかと様子を見る。

顔つきは明らかに自分とは違った。

鼻が高く、肌の色は白い、アジア系というより

どちらかというとアメリカ系に近い。

そいつらのすぐ隣に、森には似つかわしくない武装した。

トラックが停められていた。

そのトラックに一人の男が向かう。

「おいおい、あいつ何回めだよ。」

と周りの男たちがその男をからかう。

男は鼻息を荒くしながら、トラックの中に入っていく。

「大事な商品なんだから大切に扱えよ。」

「わかってるよ。」

***

10分ほどすると、

ベルトを直しながら、男がトラックから出てくる。

心なしかすっきりした表情である。

「相変わらず早漏だな。」

「うるせえよ。」

トラックは防音対応されており、中でどんなことが行われていても

その音は、普通の人間は聴こえない。

しかし、普通ではない小林たちは別である。

二人にはしっかりと聞こえていた、そして中で何が行われているも理解した。

「近藤さんあのトラックって・・・。」

「ああ奴隷だ。しかも”性”の方のな・・・。」

「鬼畜野郎が・・・。」

朝倉が、敵兵にたちに憎悪に似た嫌悪感を抱いていると、

「近藤すまん・・・。」

芹沢から無線が飛ぶ。

「どういう・・・、」

と言いかけたが、目の前の惨劇を見て近藤は察した。

敵の一人が、首から血飛沫をあげている。

その血を浴びながら小林は敵陣のど真ん中に立っている。

敵が即座に小林に対して銃を構える。

が、敵の目にはすでに小林の姿は消えていた。


小林は数を数えてた。

「5、4、3、2、1」

敵の首が飛ぶ。

足元に転がる同僚の生首を見て、

発狂しながら銃を乱射した。

小林には当たらず味方に当たる。

同士討ちである。

「やめろー、撃つなー。」

敵兵が叫ぶ。そんなことお構いなしに、

小林はまた数を数える。

「5、4、3、2、1」

敵の首が飛ぶ。

敵兵の一人は頭を抱え小さくうずくまっている。

その兵士は縦に体を切断された。

小林の死神のカウントを聞きながら、敵兵たちは

ナイフを振り回し、

「来るな、来るな、く」

敵の首が飛ぶ。

時間にして3分。

30名いた敵兵は小林たった一人によって壊滅させられた。

小林は、笑っていた。

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